免疫学:植物由来のCOVID-19ワクチン候補CoVLPの第1相臨床試験は良好な結果
Nature Medicine
2021年5月18日
植物由来で「CoVLP」と命名された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン候補は耐容性が高く、2種類のアジュバントの両方について、使った場合も使わない場合も免疫応答を誘発できるという第1相臨床試験の結果がNature Medicine に報告される。CoVLPと1種類のアジュバントの投与を2回受けた試験参加者の中和抗体レベルは、COVID-19から回復中の患者と少なくとも同程度にまで達した。
COVID-19に対するワクチンは数種類が認可されているが、1種類のワクチンだけでは、世界のワクチン需要を迅速に満たすのに十分な量を生産することはできないし、接種の対象となる集団や環境はさまざまであるから、求められる処方や剤型も異なる可能性がある。そういった製剤の1つがCoVLPで、このワクチン候補は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)スパイクタンパク質が組み入れられたウイルス様粒子であって、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)という植物によって作られる。
B Wardたちは、CoVLPが中和抗体と細胞応答の誘発に効果のある投与量を決定するために、評価者盲検、用量漸増、無作為化比較試験を設計した。2020年7月13日〜8月9日に、180人の成人(年齢:18歳〜55歳)が21日間の間隔をおいて2回のCoVLP投与(単独で、あるいはアジュバントとしてAS03もしくはCpG1018のいずれかを加えたものを無作為に投与)を受けた。アジュバントとは、ワクチンの効果を高めるために使われる物質である。42日目には、アジュバントを加えないCoVLPで中程度の免疫応答が誘発されたことが認められたが、いずれかのアジュバントが存在する場合には、免疫応答が顕著に増強された。AS03を加えたCoVLPの投与を受けた被験者では、42日目に、COVID-19から回復中の患者に比べて10倍も高いレベルの中和抗体の産生が見られた。
著者たちは、このAS03を添加したCoVLP製剤のさらなる開発を進めるべきだとする結論が得られたと考えている。現在得られるデータに基づき、1回当たり3.75 μgのAS03添加CoVLPを2回投与するスケジュールでの大規模な第2/3相臨床試験がカナダ、英国、ブラジルおよび米国ですでに始まっており、試験を南アメリカ、ヨーロッパなどの複数の国へさらに広げることが計画されている。
doi:10.1038/s41591-021-01370-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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