健康:テクノロジーの活用が高齢期の認知機能低下リスクを軽減するかもしれない
Nature Human Behaviour
2025年4月15日
デジタル技術の広範な使用は、50歳以上の成人の認知能力の低下や認知障害の発生率の低下と関連しているかもしれないというメタ分析を報告する論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。この発見は、日常的なテクノロジーの使用が認知能力を弱めるという仮説に反するものである。
デジタル技術の利用は現在広く普及しており、この技術とともに成長した最初の世代の人々は、認知症の症状が一般的に現れる年齢に近づきつつある。デジタル認知症仮説では、生涯にわたるデジタル技術の利用が認知能力を低下させると予測している。しかし、他の説では、この技術の定期的な利用が予想以上の認知能力のパフォーマンスにつながると示唆している。なぜなら、この技術は認知能力を維持する行動を促進することができるからだ。
Jared BengeとMichael Scullinは、平均年齢68.7歳の世界各国の成人411,430人を対象にデジタル技術の利用を調査した57件の研究を分析した。すべての研究には認知診断またはテストが含まれていた。その結果、デジタル認知症仮説を裏付ける証拠は見つからなかった。その代わり、デジタル技術の利用(研究者らは、コンピューター、スマートフォン、インターネット、またはこれら3つの組み合わせの利用と定義)は、これらの研究の対象となった成人人口における認知機能障害のリスク低下と関連していた。重要なのは、これらの研究の分析を通じて、この結果は人口統計学的、社会経済的、健康、またはその他のライフスタイル要因を個別に考慮しても説明できないことが判明したことである。また、BengeとScullinは、平均6.2年の追跡期間を設けた縦断的研究において、デジタル技術の利用が認知機能低下のリスク低減につながるという証拠も発見した。
著者らは、これらの結果はデジタル技術の利用と認知機能の健康との関連性を裏付ける因果関係のメカニズムを説明しているわけではないと指摘している。
- Article
- Published: 14 April 2025
Benge, J.F., Scullin, M.K. A meta-analysis of technology use and cognitive aging. Nat Hum Behav (2025). https://doi.org/10.1038/s41562-025-02159-9
doi:10.1038/s41562-025-02159-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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