公衆衛生:米国でのCOVID-19ワクチン分配の公平性を評価する
Nature Medicine
2021年5月18日
米国疾病予防管理センター(CDC)の各管轄区域が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンが公平に分配されるように努めているかどうかを調べた結果がNature Medicine に掲載される。
米国での集団免役の達成は、COVID-19ワクチンの分配の仕方、特に行政・医療サービスを十分に受けられていない地域や集団への分配が公平になされるかどうかにかかっていると考えられる。しかし、これを行うに際して、米国は公衆衛生、物流管理、社会的公正に関する前例のない難問に次々と直面している。この問題に取り組むための1つの方法は、CDCの社会的脆弱性指標(SVI)のような、不利な社会的条件におかれていることを示す地域ベースの指標を取り入れることによって、優先群を決定することである。こういった地域別の社会的格差指標(disadvantage index)を使うことで、ワクチンによる防御の必要性と有用性が共により高い集団を見つけ出せる。例えば、固定収入への依存度が高く、社会的距離を取ることがうまくできず、ウイルスに感染したり広めたりする確率が高い集団があるかもしれない。
米国でのCOVID-19ワクチンの分配を評価するため、H Schmidtたちは2020年11月8日に発表されたワクチン分配計画を解析し、その後2021年3月30日までに更新された計画も追跡した。その結果、2021年3月20日までに、米国の64のCDC管轄区(50の州、コロンビア特別区、5つの都市、8つの準州)のうちの14では、COVID-19の発生率のような数値と組み合わせて、特定の郵便番号の地域をワクチン分配で優先していた。また37の管轄区(34の州を含む)が社会的格差指標を採用していたが、2020年11月には指標を取り入れていたのは19の管轄区だけだった。最大級の貧困層を抱える管轄区の中では、ワクチン分配に社会的格差指標を使っているところが7から14へと倍増していた。
またいくつかの州では、社会的格差がより大きい地域の住民用のワクチン予約枠を増やしていることが分かった。例えば、テネシー州はモデルナワクチンの5%をSVIの高い地域向けに確保している。マサチューセッツ州は、COVID-19の負荷が不釣り合いに大きい上にSVIも高い地域に、ワクチンを20%追加して分配している。ノースカロライナ州は、ワクチンの30%を、人種的・民族的マイノリティーのための公平なワクチン接種機会を確保するなどの目的で留保しており、また毎日のワクチン接種数の40%を歴史的に社会から無視されてきた人々を優先するために確保することを要請している。
著者たちは、ワクチンの公正な分配が確実に実現されるように、連邦、州、地域レベルの政策立案者は社会的格差指標を採用すべきだと結論している。
doi:10.1038/s41591-021-01379-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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