疫学:COVID-19による死亡者数がブラジルの平均余命を短くしている
Nature Medicine
2021年6月29日
ブラジルでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が原因の死亡者数によって、2020年の出生時平均余命(平均寿命)は1.3年、2021年1月から4月では1.8年短くなったことが、Nature Medicine に掲載される研究で明らかになった。一部の州では、COVID-19に遭遇したことで、平均余命がこの20年では見られなかったほど短くなっており、最も大幅な短縮は2020年のアマゾナス州の3.46年である。
2021年4月はブラジルで大流行が始まって以来死亡者数が最も多くなった月で、9つの州都では、出生数よりも死亡数の方が多かったことが報告された。この死亡者数の影響は、出生時平均余命(ある特定の年に生まれた新生児が、その年の一般的な死亡率が一生の間続いたとして、平均して何年間生きると推定されるかを示す)によって測ることができる。COVID-19で死亡するリスクは高齢者ほど大きいので、この死亡者数は、65歳の平均余命(ある特定の年の65歳以上の死亡率がそのまま続いたとして、65歳の人が何年生きると推定されるかを示す)の変化にも反映される可能性がある。
COVID-19関連死がブラジルの人口に及ぼす影響を数値化しようと、Marcia Castroたちは2020年1月から2021年4月にかけて報告された全死亡者数のデータを解析して、各州の死亡者数を調べた。著者たちは、2019年と2020年にブラジルで報告された総死亡者数に基づいて、出生時平均余命が1.31年短くなったと推定した。落ち込み幅は、女性(0.95年)よりも男性(1.57年)の方が大きかった。65歳の平均余命は0.94年短くなったと推定された。2021年1月1日から4月25日までの期間では、出生時平均余命が1.78年、65歳の平均余命は1.05年短くなった。平均すると、出生時平均余命、65歳の平均余命の落ち込み幅は、2020年、2021年共にブラジル北部地域でより大きいことが分かった。北部地域は、所得格差、貧困、インフラへのアクセス、医師数、利用可能な病床数という指標のいくつかが最悪の値であり、また感染制御対策が(たとえば北東部に比べ)それほど厳格に実施されていなかった。
著者たちは、パンデミックや戦争といった強烈な衝撃に見舞われた地域で過去に見られたように、パンデミックへの対応や検査、ワクチン接種の実施状況に急激な変化がない限り、平均余命はすぐには回復しないだろうと述べている。そして、ブラジルの今後の人口動態には、今回の知見で報告されたよりさらに厳しい影響が出る可能性があると予測している。
doi:10.1038/s41591-021-01437-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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