遺伝学:COVID-19の遺伝的リスク因子の解明
Nature
2021年7月8日
ヒトの重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化の遺伝的基盤をマッピングする取り組みが世界規模で行われており、このほど感染感受性と重症化に関連する13か所のゲノム領域が新たに突き止められた。19か国で実施された46件の研究で対象となった合計約5万人のCOVID-19患者の分析が行われた結果を報告する論文が、今回Nature に掲載される。現在進行中の数々の研究により、SARS-CoV-2感染からCOVID-19発症に至る過程に関する新たな知見が期待されており、新薬開発や薬剤リパーパシングのための標的が特定される可能性もある。
男性、体重過多と高齢が、COVID-19患者の重症化に寄与する要因であることが明らかになっているが、これらのリスク因子では重症度の個人差を説明しきれない。一方、ウイルスの宿主であるヒトの遺伝的性質は、さまざまな感染症(呼吸器ウイルスを含む)の感染感受性と重症化に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。SARS-CoV-2感染とCOVID-19においてヒトの遺伝的性質が果たす役割を探究するため、COVID-19 Host Genetics Initiative(COVID-19 HGI)が構築され、データを収集、共有、分析するための研究者の国際的ネットワークが形成された。
46件の研究で対象となったCOVID-19患者のゲノムワイド関連メタ解析の結果、SARS-CoV-2感染やCOVID-19重症化と関連する新規座位が特定された。これらの座位の中には、以前の研究で特定された自己免疫疾患、炎症性疾患や肺疾患形質と関連する座位と重複するものがあった一方、特定の亜集団にしか見られないものもあった。例えば、東アジア系の人々を対象とした4件の研究では、COVID-19重症化に関連する2つの座位が発見され、さまざまな祖先を有する人々を包括的に解析することの価値が浮き彫りになった。著者たちは、COVID-19 HGIという国際的な共同研究の枠組みができたことで、COVID-19に関連する宿主の遺伝的要因をかつてないスピードで新たに特定することができたと結論付けており、今後もデータ収集を継続して、祖先のサイズと多様性の両方の点で解析の規模を拡大していく予定である。
doi:10.1038/s41586-021-03767-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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