COVID-19:ワクチン耐性株を止めるにはワクチン接種キャンペーン期間中の感染拡大抑制が必要
Scientific Reports
2021年7月30日
このほど実施されたモデル化研究で、ワクチン耐性株が出現する確率を低下させるためには、ワクチン接種キャンペーン期間を通じて、マスク着用といった薬以外の方法によって重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染拡大を抑制する必要のあることが明らかになった。この研究結果を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Fyodor Kondrashovたちの研究チームは、3年の期間を設定し、その始期から1年後にワクチン接種を開始し、1000万人の集団にワクチン耐性株が出現する確率のシミュレーションを行った。その際には、ワクチン接種率、ウイルス変異率に加えて、ロックダウンなどの介入の後に生じるような伝播率の変動(伝播率が上下する波)が考慮に入れられた。
今回の研究のモデル化から、ワクチン接種速度が速いと、ワクチン耐性株が出現する確率が低下することが示唆された。ところが、今回のモデルでは、集団内で大部分の人々がワクチン接種を完了した時期に薬以外の介入措置が緩和された場合、ワクチン耐性株が出現する確率が大幅に上昇することも明らかになった。その原因についてKondrashovたちは、ワクチンの存在下では、耐性株が原株(野生型)よりも優位に増殖するためだと考えている。また、耐性株が定着するシナリオでは、耐性株が最初に出現するのは、集団のワクチン接種率が60%に達した頃であることが分かった。
Kondrashovたちは、ワクチン接種キャンペーンが終わる頃にウイルス伝播率を低下させて新たに出現した耐性株を自然に根絶させるために、対象を絞り込んだ薬以外の措置(マスク着用、広範な検査、ソーシャルディスタンシングなど)を実施するよう推奨している。Kondrashovたちは、感染伝播を抑制する措置(検査回数の増加と検査の普及、厳重な接触者追跡調査、高いゲノム配列決定率、旅行制限など)によってウイルス根絶の確率が高まる可能性があるという考えを示しているが、今回の研究では、個々の措置がウイルス伝播率に及ぼす影響をモデル化していないと述べている。一部の国でワクチン接種が遅れるとワクチン耐性株が全世界で出現する可能性が高くなるため、真にグローバルなワクチン接種の取り組みによって耐性株が全世界に広がる可能性を減らす必要があると、Kondrashovたちは結論している。
doi:10.1038/s41598-021-95025-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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