疫学:医師や看護師が出演するフェイスブックの広告が、米国の2020年のクリスマス休暇期間のCOVID-19感染抑制に役立った
Nature Medicine
2021年8月19日
フェイスブックの利用者が、感謝祭とクリスマスの休暇中に外出しないように医師や看護師たちが説得する短い動画広告を受け取った米国内の地域(郵便番号で区分)では、対照となった地域に比べて、その後2週間の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患数が3.5%減少したことが分かった。Nature Medicine に掲載されるこの研究によって、およそ3000万人のフェイスブック利用者が目にしたこの広告キャンペーンが、感謝祭とクリスマス前のそれぞれ3日間の平均移動距離の有意な減少(2020年2月の休日との比較)と関連付けられることも明らかになった。しかも、高頻度で広告を流した地域の方が、頻度の低い地域に比べて移動距離の減少幅が大きかった(前者で4.4%、後者で3.6%)。
米国では、看護師と医師は健康に関して最も信頼できる専門家と考えられている。しかし、こういった専門家が、ソーシャルメディアを介して公衆衛生に関するメッセージを広く伝えることで行動に影響を与えられるかどうかは、よく分かっていない。
E Dufloたちは、医師と看護師が撮影した20秒の短い動画を大規模に流すと、休暇旅行に集団レベルで影響が現れるかどうか、さらにそれが休暇後のCOVID-19の患者数にまで影響するかどうかを調べるため、フェイスブックでの広告キャンペーンをデザインし、13州の820の郡からランダムに選んだ郵便番号域に住むフェイスブック利用者が、スポンサー付コンテンツとしてこの動画を受け取るようにした。さらに、郵便番号の選び方を工夫して、ランダムに選んだ一部の郡には、動画を受け取る郵便番号を他よりも多く割り当てた。感謝祭の前には1100万人以上が少なくとも1回、クリスマス前には2300万人以上が少なくとも1回、動画を受け取った。この研究に参加したフェイスブック利用者は、平均すると感謝祭前には2.6回、クリスマス前には3.5回動画を受け取った。著者たちによれば、高い頻度でフェイスブック動画を受け取った郵便番号地域の割合の多い郡では、利用者の休日前3日間の移動距離が減少した(携帯電話の追跡データで測定)。しかし、この動画キャンペーンは、感謝祭やクリスマス当日のステイホームにはつながらなかった。全体として、このキャンペーン後のCOVID-19の新規感染者は、平均して3.5%減少したことが分かった。
臨床医は命を救う情報をソーシャルメディアを介する規模で人々に伝える効果的な窓口になり得ると、著者たちは結論している。同様なメッセージが新型コロナワクチン接種の促進にも効果があるかどうか、さらに研究を進めるべきだろう。
doi:10.1038/s41591-021-01487-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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