健康:モーツァルトの楽曲は薬物耐性てんかんの治療法として有効か
Scientific Reports
2021年9月17日
薬物耐性てんかん患者がモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ ニ長調(K.448)」を30秒間以上聴くことが、脳内でてんかんに関連した電気的活動のスパイクの頻度が低下することと関連している可能性が明らかになった。今回の研究結果は、この曲に対してポジティブ感情を伴う応答が生じることが、この曲の治療効果に寄与している可能性のあることも示唆している。研究の詳細が記述された論文は、Scientific Reports に掲載される。
てんかん患者の場合、「2台のピアノのためのソナタ ニ長調」を聴くことが、脳内でてんかんに関連した電気的活動のスパイクの頻度が低下することと関連していることが、これまでの研究によって明らかになっていた。しかし、この曲を聴いている時間が、この関連性にどのような影響を及ぼすのか、そして、その理由については明らかになっていなかった。
今回、Robert Quonたちは、薬物耐性てんかんの成人患者(16人)に、「2台のピアノのためのソナタ ニ長調」を含むいろいろな楽曲の断片(長さ15秒または90秒)を続けて聴かせた。そして、Quonたちは、脳波記録法(EEG)を用いて、楽曲を聴いている患者の脳内の電気的活動を測定した。その結果、「2台のピアノのためのソナタ ニ長調」を30~90秒聴いた場合にてんかんに関連する脳全体の電気的活動のスパイク数が平均66.5%減少し、他の楽曲の断片では、こうした効果が認められなかった。スパイク数の減少が最も大きかったのは、情動応答の調節に関与する脳の部位である左右の前頭皮質だった。また、この曲の長い繰り返しの部分が終わるところを聴いた被験者の前頭皮質で、電気的活動の一種であるシータ活動が増加した。これまでの研究から、シータ活動は、音楽に対するポジティブ感情を伴う応答と関連している可能性のあることが示唆されていた。
Quonたちは、「2台のピアノのためのソナタ ニ長調」をわずか30秒間聴くだけで、音楽に対するポジティブ感情を伴う応答に関連しており、前頭皮質によって制御される脳内ネットワークが活性化されると考えられるという仮説を提起している。Quonたちは、これらのネットワークの活性化は、薬物耐性てんかん患者の脳内におけるてんかん関連の電気的活動のスパイクの減少に寄与している可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41598-021-95922-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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