COVID-19:米国でワクチン接種を必須条件にすればワクチン接種の推進に役立つかもしれない
Scientific Reports
2021年10月21日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチン接種を、米国内での就労、就学や旅行の必須条件とすることは、ワクチン接種を望ましいとし、あるいはワクチン接種の効能を強調した雇用方針よりもワクチン接種を推進する効果が大きいと考えられるという研究結果を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Dolores Albarracinたちの研究チームは、米国各地の成人299人を対象に、ワクチン接種が就労、旅行、就学の必須条件となった場合にワクチン接種を受ける意思があるかどうかを調べた。次に、合計1324人が参加した3件の実験が行われ、現在の雇用主または仮想の新しい雇用主がSARS-CoV-2に対するワクチン接種を必須条件とした場合、ワクチン接種が望ましいとした場合、ワクチン接種の効能を強調した場合のそれぞれでワクチン接種を受ける可能性が高くなるか、低くなるかを尋ねた。また、Albarracinたちは、心理学的質問票を用いて、参加者が規則に対して否定的に反応する傾向を測定し、仮想のワクチン接種要件によってワクチン接種に対する見方が影響を受けたかどうかを参加者に質問した。
調査対象となった299人の86%は、ワクチン接種が就労、旅行、就学の必須条件となった場合にワクチン接種を受けると回答した。ワクチン接種に関する仮想の職場規程に対して、参加者は、雇用主がワクチン接種を望ましいとした場合やワクチン接種を推奨した場合よりもワクチン接種が必須条件となった場合の方がワクチン接種を受ける意思が強くなったと回答した。また、規則に対して否定的に反応する傾向があると回答した参加者は、ワクチン接種が必須条件になった場合に、規則に対して中立的または肯定的に反応する傾向があると回答した参加者と比較して、ワクチン接種を受けることについて、同程度またはワクチン接種を受ける方向への影響を受けたことが分かった。さらに、規則に対して否定的に反応する傾向があると回答した参加者においては、仮想のワクチン接種要件が設定された場合に、ワクチン接種の有益性に対する見方は影響を受けなかったが、ワクチン接種を受けることに対する道徳的義務感は、ワクチン接種が望ましいとされた場合とワクチン接種が推奨された場合より低くなった。このことからは、ワクチン接種を必須条件にすると、規則に否定的に反応する傾向がある者のワクチン接種を受けたいという気持ちが強くなるかもしれないが、その理由はワクチン接種の効能に対する見方でもワクチン接種を受ける道徳的義務でもないことが示唆される。
doi:10.1038/s41598-021-00256-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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