遺伝学:「ケビン・ベーコン数」遺伝子の研究
Nature Communications
2024年5月1日
ショウジョウバエの社会的ネットワークの構造を制御する遺伝子について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この遺伝子は、俳優のケビン・ベーコンにちなんで命名された。
社会的ネットワークは、個体間の相互作用を表すもので、ヒトやその他の動物種にとって重要だ。ヒトの場合、ネットワーク内の個人間のつながりは、数多くの因子(肥満、喫煙行動、幸福など)の伝播に影響を及ぼす可能性がある。社会的ネットワーク内での個体の位置は、その個体がどれだけ多くのつながりを持ち、どの個体とつながっているかによって決定される。こうした個体の位置は、多くの種において遺伝性であることがこれまでの研究で示唆されているが、社会的ネットワークの構造に対する遺伝的寄与は、ほとんど解明されていない。
今回、Joel Levineらは、ショウジョウバエの社会的ネットワークにおける中心性(「媒介中心性」とも言う)のレベルを決定していると考えられる遺伝子を特定した。Levineらは、この遺伝子を「degrees of kevin bacon(dokb)」と名付けた。この名称は、最初に1人の俳優を選び、その俳優が1つの映画で共演した俳優を選び、その俳優がさらに別の映画で共演した俳優をたどって、最終的に共演者ケビン・ベーコンにつながるまでの次数(degree)の少なさを競うインターネットゲームにちなんでいる。このゲームで、プレイヤーは、有名人の社会的つながりをたどることができる。今回の研究では、ショウジョウバエのdokb遺伝子の発現が低下すると、媒介中心性が低下することが分かった。Levineらはまた、dokb遺伝子の特定のコピーが異なる系統のショウジョウバエの間で交換されることがあり、このことが系統の媒介中心性に影響を及ぼすことを明らかにした。
dokb遺伝子に関しては、ショウジョウバエでの研究しか行われていないが、Levineらは、今後、dokb遺伝子が関与する分子経路や特定の機能を担う細胞の回路が他の動物種にも保存されていることが明らかになるだろうと考えている。
doi:10.1038/s41467-024-47499-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:大きな鳥は必ずしも鳥頭というわけではないScientific Reports
-
コンピューターサイエンス:AIツールが創造的なビデオゲーム開発を支援Nature
-
生態学:深海の生態系を調査するNature Communications
-
がん:CAR-T療法を受けた患者に長期寛解Nature Medicine
-
素粒子物理学:最高エネルギーのニュートリノが話題を呼ぶNature
-
動物の行動:カメは磁気地図が食べ物に導くと踊るNature