Research Press Release

遺伝学:古代の血液サンプルから、人類はアフリカを離れた後に適応したことが示唆される

Scientific Reports

2025年1月24日

ホモ・サピエンス(Homo sapiens)は、アフリカを出た後に血液型に適応的な遺伝子変化を経験した可能性があることを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。この研究は、12万年前から2万年前の間に生息していたユーラシア大陸のホモ・サピエンス22人とネアンデルタール人14人の血液型の遺伝的多様性を調査したもので、新しいRh(RHDとRHCE)対立遺伝子(アレル)は、ホモ・サピエンスがアフリカを離れた後、ユーラシア大陸に広がる前に出現したことを示唆している。

ホモ・サピエンスは、10万年前からレバント(Levant)山脈とザグロス(Zagros)山脈でネアンデルタールと繰り返し遭遇し、交雑していた。これらの相互作用による血液型の変化を理解することは、人間の移動パターンと、潜在的に有利な遺伝的変化が起こった場所を特定するのに役立つかもしれない。

Stéphane Mazièresらは、古代の人骨から採取した遺伝子データを使用し、4万年前から1万年前の上部旧石器時代にネアンデルタール人の血液型が多様化していたかどうかを評価した。ネアンデルタール人は、現代のサハラ以南のアフリカの人々にみられるものと同様の祖先型対立遺伝子を持っていたが、ユーラシア大陸に生息していた初期のホモ・サピエンスは、新しいRh対立遺伝子を発達させており、これは今日では輸血や妊娠時のモニタリングに不可欠な血液型となっている。これらの対立遺伝子は、ネアンデルタールには存在しないことから、アフリカを離れた後にホモ・サピエンスの中で分化した可能性がある。また、この研究では、現代の人間には存在しない3つの対立遺伝子も特定されており、これらは、現在のユーラシアの人口に貢献していない祖先を持つホモ・サピエンスの系統に属するかもしれない。

著者らは、ペルシャ高原に到達したホモ・サピエンスの集団は、少なくとも1万5,000年間そこに留まっていたと推測している。これは、Rh対立遺伝子が発生するのに十分な長さである。これらの対立遺伝子は、アフリカに留まった集団とは異なる選択圧にさらされていたホモ・サピエンスの集団に、進化上の優位性をもたらした可能性がある。

Mazières, S., Condemi, S., El Nemer, W. et al. Rapid change in red cell blood group systems after the main Out of Africa of Homo sapiens. Sci Rep 15, 1597 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-024-83023-0
 

doi:10.1038/s41598-024-83023-0

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