Research Press Release
細胞の老化は創傷治癒の間の繊維化を防止する
Nature Cell Biology
2010年6月7日
細胞の老化は腫瘍抑制機序の1つだと考えられているが、がん以外の病気で細胞老化がどのような役割を果たしているのかを明らかにした研究はわずかしかない。今回、CCN1というタンパク質が仲介する細胞老化が、創傷治癒の間の余分な組織形成を防止することを示唆する研究が発表された。
細胞老化とは、細胞が生き続けてはいるが分裂能力を失っている状態である。J JunとL F Lauは、マウスで創傷治癒の際に形成される結合軟部組織である肉芽組織に老化した細胞が出現することを見いだした。機能を備えたCCN1を欠くマウスでは、少数の老化細胞しか出現しない。したがって、著者たちは、CCN1が老化を仲介すると考え、CCN1がこの機能を果たす機序について調べた。
機能を備えたCCN1を欠くマウスの創傷では、繊維化、つまり余分な繊維組織の形成が増加する。このマウスで、創傷部位をCCN1タンパク質で処理すると、細胞老化が誘導されて繊維化が防止された。
繊維化は多くの疾病に関連してみられる。今回の結果は、細胞老化が繊維化防止機序の1つとして重要であることの説得力ある証拠といえる。
doi:10.1038/ncb2070
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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