Nature ハイライト

微生物学:マウスにおいて明らかにされた微生物代謝物

Nature 579, 7797

微生物相によって産生された代謝物が、宿主の生理学的性質に顕著な影響を及ぼすことが次第に明らかになってきている。しかし、哺乳類の全身において、微生物相が関与する完全な化合物レパートリーやその多様性は明らかになっていない。P Dorresteinたちは今回、無菌マウスとSPF(specific-pathogen-free)マウスについて、29種類の器官の96部位から試料を採取し、新しい質量分析手法を用いた比較により、全身メタボロームの非標的評価を行った。その結果、微生物相は全ての器官の化学的性質に影響を及ぼし、メタボロームの2%(膀胱)から44%(糞便)に関与していることが分かった。彼らは、哺乳類ではこれまで検出されていなかった、フェニルアラニン、チロシン、ロイシンとの胆汁酸抱合体の存在を明らかにした。また、これらの新規胆汁酸が、in vitroでファルネソイドX受容体(FXR)のアゴニスト性リガンドとして機能し、in vivoではFXR シグナル伝達を調節する可能性があることも分かった。著者たちはさらに、ヒトのメタボロームデータセットを調べ、これらの独特な胆汁酸が炎症性腸疾患(IBD)や嚢胞性繊維症などの疾患状態で豊富に見られることを示している。今回の知見を裏付け、これらの新しい胆汁酸抱合体のヒト生理機能における重要性を調べるには、さらなる研究が必要である。

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