Nature ハイライト

宇宙:明らかになったタイタンの姿

Nature 438, 7069

ホイヘンス突入機が土星の衛星タイタンに着陸して、この巨大衛星の大気と地表についての初の直接観測データが送られてきた。今週号の7編の論文には、気候システムを持ち地質活動も起こっているという原始地球に似た世界が描き出されている。  G Israëlたちは、タイタンの雲を形成するエアロゾルに、炭素と窒素を含む複雑な有機物でできた固体の核があると報告している。これらの化合物は、メタンを豊富に含むタイタンの大気の光化学スモッグ中で形成され、最終的には降雨と大気循環によって地表に運ばれる。  H Niemannたちは、大気ガス中のアルゴン、窒素、炭素の原子の同位体存在量を測定した結果、タイタンのメタンが生物活動に由来すると考える根拠はないと結論している。しかしメタンは絶え間なく供給されている。これはおそらく地質学的活動によって、タイタン内部にある大規模な炭素の貯蔵場所から放出されているのだろう。またこの研究チームによると、大気中の窒素はもともと、アンモニアを含む氷の微惑星によって運ばれてきたもので、このアンモニアが地球で起こるように分解されて、最後に窒素となったらしい。  F Ferriたちは、タイタンの大気最上層から地表までの温度と圧力の厳密な測定を行い、地表はマイナス179℃という極寒さであることを明らかにした。そして、大気が複数の層にはっきりと分かれていることや、稲妻が発生している証拠までをも発見した。  M Birdたちは、タイタンの風が平均すると自転と同じ方向に吹いていて、地表面の近くでは非常に弱く、歩く速度と同程度であることを発見した。  M Tomaskoたちは、ホイヘンスの降下中に観測された干上がった河床と流水路について論じ、液体メタンが雨あるいは超低温火山からの噴出物として降り、時折地表一杯に溢れ流れることを立証している。ホイヘンスの着地点は、岩石や小石と見られるものが散在しているが、地霧を発生するほど気体メタンが多くはない。  J Zarneckiたちは、ホイヘンスの着地点が、氷の粒で覆われた比較的平坦な地表で、湿った粘土や砂と同じかたさの場所であることを発見した。温度の高い探査機が着地したときには、この地表からメタンが噴出した。  そしてO Witasseたちは、ホイヘンスの降下と着地を概観・検討している。「タイタンについて調べるべきことは、ホイヘンスで得られた豊富なデータを解析した後にも、まだたくさん残っているだろう」と、T OwenはNews and Viewsで語っている。

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