Nature ハイライト

量子情報:光のためのメモリー

Nature 438, 7069

今週号に掲載された2編の論文によれば、光の単一粒子である光子を原子雲から生成させ、別の原子雲に送り、さらにその量子的性質を失うことなく保存し読み出すことが可能になった。これは、原子や光子を使って情報を保存し処理する量子通信や量子計算ネットワークの実現に向けた重要なステップである。  古典的な光パルスは、光ファイバーを通じて情報を運ぶために既に使われている。しかしこれらの信号は、「リピーター」を用いて繰り返し増幅しなければならず、個々の光子によって運ばれる量子情報はこれによってすべて破壊されてしまうと考えられる。  A KuzmichたちとM Eisamanたちは、「量子リピーター」の基盤を事実上作り出した。これにより量子情報を大きく損なうことなく長距離にわたって運べる可能性が出てきた。  「今回の研究は、量子暗号の分野に非常に重要な意味を持つだろう」と、P GrangierはNews and Viewsで述べている。例えば、この技術は、受信者が安全に保管されているメッセージを開くための暗号鍵の送達に使うことができる。外部からの干渉はどんなものであっても鍵を無効にするので、メッセージ内容を盗み読みから守ることができる。  量子情報に関する第3番目の論文ではJ Kimbleたちが、もつれ合った状態の保存と送達という分野での進展を報告している。もつれ合った状態では、2つ以上の物理的に離れた系が同じ量子情報を共有する。彼らは、2.8m離れた位置を占める約10万個の原子からなる2つの試料が、1量子ビットの情報を共有・保存できることを示した。

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