ダイヤモンドの強さを考えただけでも、炭素-炭素間の共有結合があっさりと切れるとは普通は考えないだろう。しかし、この結合はこれまで考えられていたよりも容易に切断できるようなのだ。 S Sheikoたちは、原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、長い側鎖をもつ一連のブラシ状巨大分子に吸着が及ぼす影響を調べた。そして観察結果から、吸着という単純でありふれた過程がこれらの分子を変形させるばかりでなく、分子骨格の炭素-炭素結合の切断を自発的に引き起こすことが明らかになった。 巨大分子の構造が表面との接点の数を最大にするように変化すると、高分子骨格に沿って張力が発生し、切断が起こる。比較的弱い相互作用が重なって炭素-炭素結合のように強い共有結合を切断できることが示されたのは今回が初めてである。Sheikoたちの結果は、溶液中で合成された巨大分子は基板上に析出した後も分解しないという一般的に受け入れられている見解に疑問を投げかけるものである。今回の研究は、高度に枝分かれした構造をもつ分子の設計を行う際に、不要な分解を避けたり、また所定の位置で確実に切断したりするのにかかわってくると思われる。