Nature ハイライト

Cover Story:特集:2023年を振り返る:今年の重要人物10人

Nature 624, 7992

2023年も終わろうとしている。過去12カ月を振り返り、今年も「Natureが選んだ10人の科学者」が発表された。今年1年間に科学の発展に貢献した人々である。10人のうち4人はそれぞれ画期的な目標を達成したチームの一員で、インド初の月着陸の成功を助けたインド宇宙研究機関(ISRO)のチャンドラヤーン3ミッションの副プロジェクトディレクターKalpana Kalahasti、消費エネルギーより多くのエネルギーを生成する核融合反応を初めて成し遂げた米国エネルギー省の国立点火施設(NIF)の主任設計者である物理学者Annie Kritcher、2匹の雄マウスの細胞からマウスの仔を初めて誕生させた大阪大学の発生生物学者、林克彦、ChatGPTの開発の中核を担ったOpenAI社の主任科学者でAIのパイオニアであるIlya Sutskeverが選ばれた。また、全球的な影響をもたらす問題に取り組んだ2人である、過去数年間のアマゾンの森林伐採の増加に警告を発してその削減に役立つ政治的措置をとったブラジルの環境大臣Marina Silvaと、気候変動の破壊的影響への各国の準備を助けている国連初のチーフ・ヒート・オフィサーEleni Myrivilleが選ばれた。さらに、生体臨床医学の重要な進歩に貢献した3人である、マラリア感染とそれによる死を減らすのに大きな効果がある思われるワクチンの承認を得るのに役立つ治験を率いたブルキナファソのナノロ臨床研究ユニット(CRUN)のユニット長である医師Halidou Tinto、膀胱がんなどのがんの治療の大きな進歩の先触れとなる治験の結果を報告した英国の聖バーソロミュー病院のがん研究者Thomas Powles、現在の大型抗肥満薬の基礎になったホルモンGLP-1の発見に重要な役割を果たし、その貢献が約40年を経てようやく認められた生化学者のSvetlana Mojsovが選ばれた。そして、室温超伝導に関する現在は撤回されている報告に問題点を見いだした米国フロリダ大学の物理学者James Hamlinが選ばれた。さらにこの10人と並んで、社会に広い影響を及ぼすだけでなく科学者が研究を行いその成果を広める方法を変革する可能性がある存在としてChatGPTも選ばれた。表紙は、この1年を席巻した開発の1つである人工知能から着想を得たもので、Artificial WorldviewsからChatGPTへの約1700のクエリに基づいて、人・物・場所と、ChatGPTが自身の知識を分類した分野やサブ分野とを結ぶネットワークが描かれている。

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