Nature ハイライト
Cover Story:考察の糧:ナス属のパンゲノムで主要作物間の進化上のつながりを探る
Nature 640, 8057
作物ゲノミクスは、単一の参照ゲノムから、種の遺伝的多様性を網羅するゲノムの集合体へと急速に移行している。こうした「パンゲノム」によって、同一種および近縁種の個体間や品種間の形質を比較・検証する機会が得られる。今週号では、M Schatz、J Van Eck、J Gillis、 Z Lippmanたちが、この概念をさらに一歩進め、ナス属(Solanum)全体を網羅するパンゲノムを提示している。ナス属には、世界的作物であるトマトやジャガイモの他、アフリカナス(表紙の写真)やナランジラ(naranjilla)などの在来作物が含まれる。研究チームは、ナス属の全種で共有されている遺伝子は約60%にすぎないことを見いだした。これは、急速に進化する遺伝子重複と合わせて、ある作物の知見を別の作物に適用することの難しさを浮き彫りにしている。彼らは、ナス属のゲノムについて、特に研究が進んでいない在来種に関する広範な知識があれば、主要作物と孤児作物の育種戦略を同様に、より予測可能で成功しやすいものにできると示唆している。
2025年4月3日号の Nature ハイライト
量子物理学:超小型人工衛星を使った量子鍵配送の実現
超伝導:鉄系超伝導体に見られる特異なクーパー対密度変調
ペロブスカイトLED:ペロブスカイト材料を使った世界最小のナノLED
電子工学:非従来型手法で神経を模倣するCMOSトランジスター
表面化学:油–水界面での水素結合の乱れと強い電場
有機化学:透明化剤製造からの廃棄物を大幅に削減
高分子化学:リン酸塩を用いたPFASのメカノケミカル破壊によるフッ化物回収
有機化学:銅/光触媒反応によるハロゲン化アルキルの脱ラセミ化
地球力学:地球マントルの固化が基底マグマオーシャンにつながった
生態学:土壌改変者が生態系機能に及ぼす作用
考古学:これまでの記録を100万年以上さかのぼる骨角器製作の証拠
神経科学:脳が行う学習のアルゴリズム
微生物遺伝学:古ゲノムから梅毒トレポネーマの歴史が明らかに
細胞生物学:肺繊維症の起源細胞と転写調節因子
幹細胞:腫瘍発生には変異型陰窩の密度が重要
遺伝学:第四の転写中DNA損傷機構
生化学:深層学習などを利用して膜貫通タンパク質を正確に設計する
ウイルス学:未成熟なHIV-1粒子が感染性を持つ成熟粒子になる仕組み
薬理学:カンナビノイド受容体1を標的とする鎮痛剤