Nature ハイライト 進化:ゲノムの進化チャートを作成 2004年7月1日 Nature 430, 6995 一連の生物について完全なゲノムが解読されれば、それらの生物の進化的関係について、これまでにない手がかりが得られるだろう。だが、本当にそうだろうか。問題となりうるのは、個々の生物の進化がそれぞれ特有であり、しかもさまざまな要素を含むことによって生じる混乱である。個々の生物系統が進化してくる過程で起こった多数のできごとが、個々の生物のゲノムにはゆがんで重なり合った痕跡しか残さないために、事態は複雑化する。そのため、ゲノム進化の一般的な機構を見つけだすことはかなり難しい。B Dujonたちは、4種の酵母のゲノムを使ってこの問題にとり組んでいる。なぜ酵母か。これらの単純な菌類は小型のゲノムをもち、生活形態は似ているが、生殖様式や生理的性質ははっきりと違っているために、比較的容易に進化の機構を調べられる。研究の結果、これらの酵母は分子レベルにおいて、マウスやヒト、そして魚類やホヤにいたる脊索動物門全体と同じくらい多様性をもつことが明らかになった。また、染色体地図とゲノムの重複性の解析から、酵母の異なる系統はゲノムの重複や大規模な遺伝子喪失など、いくつかの異なる分子機構の間に起こった明らかな相互作用を経て進化してきたことがわかった。 2004年7月1日号の Nature ハイライト 物理:量子シフト 進化:ゲノムの進化チャートを作成 生理:1個の細胞も正しく時を刻む 環境:堆肥を自給する植物 化石:デザートは翼竜 目次へ戻る