エンドウ、インゲン、クローバーなどのマメ科植物は窒素循環に重要な位置を占めている。これらの植物は、空気中から窒素を取り込んでアンモニウムイオンに変える共生細菌の宿主なのだ。植物は、このアンモニウムイオンをタンパク質を作る助けとする。植物が枯れるか、あるいは単に葉を落としただけでも、この貴重な栄養は大気中に失われてしまう。ただし、タンパク質が分解されて酸化態窒素、つまり硝酸や亜硝酸が生じる、硝化と呼ばれる過程が起これば話は別である。園芸家の堆肥容器の中には、硝化を行うさまざまな微生物がたくさん入っている。しかし、硝化を行う緑色植物はこれまで見つかっていなかった。ここで登場するのは、またしてもマメ科植物なのである。C R Hipkinたちは、防御用の毒素として3-ニトロプロピオン酸を蓄えている一部のマメ科植物が、酸化態の無機窒素を茎や葉で合成する仕組みを明らかにした。こうして生じた酸化態窒素は堆肥となって土壌中に戻っていく。普通、硝化はさまざまな生物種が関わり、複数の反応段階を経て行われる。このため、緑色植物が自分だけで硝化を行うという今回の発見は、窒素循環のこれまで知られていなかった特性を明らかにするものだ。また今回の結果は、窒素循環が一本のマメ科植物内だけで起こり得る可能性を示しており、堆肥を自給する最初の植物の発見ということになる。