Nature ハイライト

Cover Story:リスクの分散:個体群の多様性は漁業の回復力を後押しする

Nature 465, 7298

生態系の安定性における種の多様性の役割は広く認められている。しかし、やはり重要である種内の集団の多様性は、見過ごされることが多い。ブリストル湾(米国アラスカ州)の河川に回帰するベニザケの50年以上にわたるデータの分析により、いわゆる「ポートフォリオ効果」(金融市場のリスク分散との類似から命名された)がどの程度重要であるのかが明らかにされた。米国ではベニザケ漁は最も重要なものの1つであり、その60%以上はこの地域に由来している。この地域のベニザケが数百の別々の個体群から成り立っていることは、観察される個体数変動を、単一の均質な個体群を仮定した場合のほぼ半分に抑えており、数値モデルでは、個体群が均質であれば漁場の放棄が10倍に上ると推測している。漁業管理に関して、この研究は、遺伝的多様性に対する孵化場の均質化の影響を最小限にし、多系統混獲漁法による過剰漁獲から優先的に弱い系統を保護すべきことを示唆している。表紙は、2008年8月に撮影されたもので、ブリストル湾ウッド河系のヒドンクリークにたむろするベニザケ成魚(Letter p.609)。

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