Nature ハイライト 神経:血液脳関門を回復させる 2012年5月24日 Nature 485, 7399 アルツハイマー病と結びつけられているAPOE4遺伝子と、脳血管の完全性の間には関連があることが知られている。しかし、げっ歯類モデルとAPOE4がかかわる神経疾患の両方について、既知の血液脳関門機能障害を引き起こす機序は明らかにされていない。B Zlokovicたちはマウスを使って、血液脳関門を形成する細胞のマトリックスメタロプロテアーゼ経路をAPOE4が活性化することを示し、それが血液脳関門の崩壊と血液に由来する神経毒性タンパク質の神経細胞内取込みにつながることを報告している。この結果、微小血管と脳血管の血流量が低下し、こうした欠乏が合わさってマウスでは神経変性変化が始まることがある。また、APOE4によって活性化されるシグナル伝達経路の構成成分であるシクロフィリンA(CypA)が、APOE4が介在する神経機能障害の治療標的候補となることが示唆された。CypA阻害剤のシクロスポリンAの投与によって、APOE4を発現するマウスの血液脳関門が元の状態に戻った。 2012年5月24日号の Nature ハイライト 進化:すべての生物にある時計マーカー 脳:単一細胞レベルで脳活動を見る 宇宙:太陽類似星でのスーパーフレアの発生率 化学:色素増感太陽電池の着実な進歩 地球:始生代の地球化学的不連続 遺伝:黒色腫におけるPREX2変異 神経:血液脳関門を回復させる 進化:結合タンパク質から進化した酵素 目次へ戻る