Nature ハイライト

細胞:皮を厚くする細胞分裂の仕組み

Nature 437, 7056

皮膚は我々の体を取りまく障壁であり、病原菌の進入や体液の流出を防いでいる。今週号には、皮膚が複数の細胞層からなる厚みをもち、さまざまな種類の細胞が作る層から構成される仕組みを説明する、これまで知られていなかった機構が報告されている。  皮膚が障壁としての機能を果たすには、数層の表皮細胞を形成しなくてはならないが、表皮細胞は我々が生まれてから死ぬまでの間、絶えず更新されている。この過程がどのようにして起こるのかはわかっていない。しかし、培養皮膚細胞を使った以前の研究では、表皮の基底部にある幹細胞が新しい細胞を形成し、それが皮膚表面に向かって移動すると考えられていた。  T LechlerとE Fuchsは今回マウスの胚を用いて、表皮の基底部に固定された親幹細胞が非対称的に複製を行い、その娘細胞を決まった方向、すなわち皮膚の表面側へ送り出すことを明らかにした。  またLechlerたちは皮膚のこういう幹細胞は、複製開始前に既に、非対称な細胞分裂を起こすようにプログラム済みであることを見いだした。さらに、幹細胞では皮膚表面側に向く側だけに特定のタンパク質群があることがわかった。これらのタンパク質は、細胞分裂を押し進める「紡錘体」と呼ばれる装置を正しい方向に向ける。その結果、幹細胞が分裂する際には、その娘細胞が皮膚表面側に向かって分離することになる。

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