Nature ハイライト 生化学:ヘモグロビンを安定化する 2005年6月2日 Nature 435, 7042 ヘモグロビンは酸素を運んで動物の組織や臓器に届けている。ヒトの場合、ヘモグロビンタンパク質にはα鎖とβ鎖が2個ずつ含まれ、そのそれぞれに、酸素を運ぶ色素であるヘムが含まれる。遊離のαヘモグロビンは不安定で構造がほどけやすく、そうなるとヘムや鉄原子が解離して細胞に損傷を与える。このような損傷作用は、β-サラセミアといった重篤な血液疾患の病因にかかわっていると考えられている。赤血球ではαヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)がα鎖に結合して、沈殿しないようにしている。AHSPの働きがどのような分子機構によるのかは、これまでの研究によって手がかりが見つかっているものの不確かで、まだはっきりわかっていない。 今回αヘモグロビンに結合したAHSPの構造が報告された。Y Shiたちは、AHSPの結合によってαヘモグロビン構造の再編成が起こり、ヘムの解離が抑えられるために細胞が損傷から守られることを明らかにした。Shiたちの研究は、β-サラセミアのような血液疾患の原因を明らかにするのに役立つだろう。 2005年6月2日号の Nature ハイライト 行動生理:信頼の瓶詰め? 宇宙:宇宙を再現するシミュレーション 生化学:ヘモグロビンを安定化する 材料:帯電した原子が分子電流を制御する Insight:自己免疫を考える : 目次へ戻る