Nature ハイライト

医学:インスリンが両刃の剣になる理由

Nature 432, 7020

2型糖尿病に見られるインスリン抵抗性が生じる仕組みは謎で、長年、科学者を悩ませてきた。このタイプの糖尿病患者の場合、インスリンは血糖値を制御できなくなってしまうが、肝臓の貯蔵脂肪の燃焼を促すスイッチをオフにすることはできるらしい。そのため、患者は血糖値の上昇と脂肪の異常蓄積の両方によって影響を受けることになる。今回の報告で、細胞のスイッチの一部は、他のスイッチに比べてインスリンに対する感度が高いことがわかった。糖尿病の治療に新たな可能性が開けそうだ。 M Stoffelたちは、グルコース代謝や脂肪代謝を制御する細胞内の異なるスイッチを調べ、脂肪酸分解を制御するスイッチであるFoxa2と、炭水化物以外の材料からのグルコース合成を促進するFoxo1がインスリンによって不活性化されることに着目した。Foxa2はFoxo1に比べて、はるかにインスリンに対する感受性が高いようで、2型糖尿病でインスリンが両刃の剣として働く理由がこれで説明できる。 「今回の結果から、インスリンがグルコース代謝と脂肪代謝に異なる作用を示す仕組みが説明できる可能性があり、脂肪肝がどのように起こり、どのように糖尿病につながるか、興味深い手がかりが得られそうだ」と、M MontminyとS-H KooがNews and Viewsで述べている。先進国では2型糖尿病患者は成人の5%にも上るので、病気の解明が進めば、多くの人に恩恵が及ぶことになる。Stoffelたちは、Foxa2の不活性化を阻害する薬物療法が2型糖尿病の有効な治療法になるかもしれないとしている。

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