神経科学:麻痺患者のためのリアルタイムで思考を音声に変換する装置の開発
Nature Neuroscience
2025年4月1日
脳内の音声活動をリアルタイムで音声に変換する新しい装置を報告する論文が、Nature Neuroscience に掲載される。この技術は、言語障害を持つ人々が、より流暢にリアルタイムでコミュニケーションを行う能力を取り戻すのに役立つ可能性がある。
現在の脳とコンピューターを繋ぐインターフェースによる音声は、通常、人が心の中で文章を口にしようとしてからコンピューターが音声で出力するまでに数秒の遅延が生じ、円滑で明瞭なコミュニケーションが妨げられる。その結果、聞き手と話し手の間に誤解やフラストレーションを引き起こすことがある。リアルタイムのシステムは、会話の自然な流れを回復させる可能性があり、話すことができない患者の生活の質を向上させることができる。
Edward ChangとGopala Anumanchipalliらは、臨床試験の一環として、脳卒中を患って以来18年間、話すことも発声することもできなかった四肢麻痺(四肢と胴体の麻痺)の47歳女性にサイレント・ブレイン・コンピューター・インターフェースを移植した。著者らは、被験者の脳内で1,024語の完全な文章を脳内で話している間に、被験者の発話感覚運動野に埋め込まれた電極で記録された脳活動を基に、ディープラーニングのニューラルネットワークを訓練した。このモデルは、被験者の発話意図と同時に、80ミリ秒刻みでオンライン発話を解読し、さらに、負傷前の被験者の発話クリップを使用して訓練した被験者の声に似た音声を生成するために使用された。このブレイン・コンピューター・インターフェースは、訓練中に被験者が触れたことのない言葉にも一般化することができ、著者らは、この装置が数秒刻みではなく連続して動作できることを発見した。
より多くの被験者によるさらなる研究が必要ではあるが、この装置は、言語障害を持つ患者がより自然で途切れのないリアルタイムでの会話を行うことを可能にし、生活の質を向上させる可能性がある、と著者らは示唆している。
- Technical Report
- Published: 31 March 2025
Littlejohn, K.T., Cho, C.J., Liu, J.R. et al. A streaming brain-to-voice neuroprosthesis to restore naturalistic communication. Nat Neurosci (2025). https://doi.org/10.1038/s41593-025-01905-6
doi:10.1038/s41593-025-01905-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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