Research Press Release

健康:アルツハイマー病における認知機能低下のバイオマーカー

Nature Medicine

2025年4月1日

アルツハイマー病の初期段階にある人々における将来的な認知機能の回復力と低下を予測する新たなバイオマーカーの可能性を報告する論文が、Nature Medicine に掲載される。このタンパク質シグネチャーにより、アルツハイマー病の人々における症状の発症と病気の進行を予測する能力が向上するかもしれないと、著者らは示唆している。

アルツハイマー病は、最も一般的な認知症の一形態であり、臨床症状に先立つ複雑な病理学的プロセスが数十年にわたって進行する可能性がある。アルツハイマー病における認知機能の低下速度は様々であり、症状は通常40歳から100歳までの間に発症する。軽度認知障害から認知症への進行は通常2年から20年を要する。アルツハイマー病の早期のバイオマーカーを検出する技術の開発は進んでいるが、アミロイドβやタウタンパク質などの指標は、アルツハイマー病患者に見られる認知障害のばらつきを完全に説明できるものではない。

Tony Wyss-Corayらは、米国、スウェーデン、およびフィンランドの6つの独立したコホートから合計3,397人の脳脊髄液(脳と脊髄を取り囲む液体)の大規模なタンパク質分析を行った。これらの調査結果は、アミロイドβおよびタウタンパク質、認知機能、年齢、性別、APOE4などのアルツハイマー病リスク遺伝子に関する脳脊髄液および脳スキャンのバイオマーカーについて、参加者から収集したデータと統合された。Wyss-Corayらは、特定の脳脊髄液タンパク質が、アミロイドβおよびタウタンパク質とは無関係に、認知機能障害と強く関連していることを発見した。機械学習を使用して、著者らは2つのシナプス蛋白質、YWHAGとNPTX2の比率が、現在のゴールドスタンダードであるバイオマーカーよりも認知障害の指標としてより有効である可能性があることを発見した。著者らは、比率(すなわちYWHAG:NPTX2)の増加がより重度の認知障害および認知症の可能性と関連していることを発見した。この比率は、早い時期から始まる通常の老化に伴って増加し、アルツハイマー病の発症と進行を予測することが分かった。

これらの知見は、アルツハイマー病における認知機能障害の早期発見とモニタリングのための新たなバイオマーカーとなる可能性を示唆している。また、このバイオマーカーは、アルツハイマー病治療薬の臨床試験における認知機能変化のより高感度なマーカーの必要性に対処する一助となるかもしれないと、著者らは示唆している。

Oh, H.SH., Urey, D.Y., Karlsson, L. et al. A cerebrospinal fluid synaptic protein biomarker for prediction of cognitive resilience versus decline in Alzheimer’s disease. Nat Med (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-025-03565-2
 

doi:10.1038/s41591-025-03565-2

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