Volume 614 Number 7949

今週のハイライト

目次

Editorials

ウクライナ戦争の終結はまだ遠そうだが、壊滅的な打撃を受けたウクライナの研究体制の再建に向け、今すぐ取り組みを始めるべきだ。

Rebuilding Ukrainian science can’t wait — here’s how to start p.593

doi: 10.1038/d41586-023-00505-3

Natureは今週から、研究課題とその方法論が査読を通過した場合、結果にかかわらず掲載を約束する、「Registered Reports」という新しいタイプの論文の掲載を、認知神経科学と行動社会科学の分野で開始する。

Nature welcomes Registered Reports p.594

doi: 10.1038/d41586-023-00506-2

News

「CRISPRベビー」を誕生させた中国人科学者Jiankui He(賀建奎)は刑期を終えて出所したものの、過去の研究への質問の回答を拒否していることに研究者たちが不満を。

Disgraced CRISPR-baby scientist’s ‘publicity stunt’ frustrates researchers p.599

doi: 10.1038/d41586-023-00382-w

エムポックス(サル痘)はアフリカではいまだ猛威を振るっているが、世界的な流行は収まっており、国際的な関心の低下を懸念する声が。

WHO may soon end mpox emergency — but outbreaks rage in Africa p.600

doi: 10.1038/d41586-023-00391-9

Twitter APIの無料アクセスを終了するとの発表に、ソーシャルメディア研究者たちが危機感を。

Researchers scramble as Twitter plans to end free data access p.602

doi: 10.1038/d41586-023-00460-z

赤道ギニアにおけるマールブルグ病のアウトブレイクを受け、ワクチンの臨床試験を行おうと研究者たちが奔走を。

Marburg virus outbreak: researchers race to test vaccines p.603

doi: 10.1038/d41586-023-00468-5

昨年の年次総会で抗議活動を行った2人の研究者に処分を下した米国地球物理学連合(AGU)に、批判が。

Outcry as scientists sanctioned for climate protest p.604

doi: 10.1038/d41586-023-00440-3

マウスの「ミラーニューロン」が、自らの闘争時だけでなく闘争を見たときも発火することが明らかに。

‘Mirror neurons’ fire up during mouse battles p.605

doi: 10.1038/d41586-023-00418-1

4つの高高度気球が米国にスパイ活動を疑われて撃墜されたが、こうした気球は他にどのような目的でどの程度使われているのか。

High-altitude balloons: a scientists’ guide to what’s up there and why p.606

doi: 10.1038/d41586-023-00482-7

News Features

ウクライナの科学研究を絶やさぬための闘い

The fight to keep Ukrainian science alive through a year of war p.608

戦時下のウクライナにおいて、国際的なつながりが、科学研究再建の助けになっている。

doi: 10.1038/d41586-023-00508-0

脳が病気と健康を制御する仕組み

Your brain could be controlling how sick you get — and how you recover p.613

脳と免疫系のつながりを解明することができれば、さまざまな病気の治療に役立つと期待される。

doi: 10.1038/d41586-023-00509-z

News & Views

考古学:古代帝国の崩壊時に起きた気候危機の証拠

Signs of ancient climate crisis as the Hittite empire unravelled p.625

今回、トルコ中部で得られたビャクシン属樹木の年輪標本の評価と別のタイプの年代測定分析によって、紀元前1198〜1196年の壊滅的な干ばつが、ヒッタイト帝国の滅亡に寄与したことが立証された。

doi: 10.1038/d41586-023-00271-2

進化学:熱帯の生物多様性が寒帯の気候と関連付けられた

Tropical biodiversity linked to polar climate p.626

熱帯に向かって種の多様性が増大していることは、説明されていない特筆すべき世界的な現象である。今回、海洋の微化石の証拠から、太古の気候寒冷化と寒帯気候のダイナミクスの結果としてこのパターンが生じたことが示唆された。

doi: 10.1038/d41586-023-00392-8

物性物理学:ねじれで固体の電子を調べる

A twist in the bid to probe electrons in solids p.628

今回、2種類の顕微鏡技術を組み合わせて、極薄の原子シートを互いにねじれさせるツールが作られた。この方法によって、エキゾチックな層状物質電子物性を調べる新たな切り口が得られた。

doi: 10.1038/d41586-023-00474-7

神経変性:アルツハイマー病のリスク遺伝子が腸–脳軸を働かせる

The Alzheimer’s risk gene APOE modulates the gut–brain axis p.629

腸内微生物から脳への信号は、神経変性に関与している可能性がある。今回、アルツハイマー病のリスクがバリアントによって異なるAPOE遺伝子が、この腸–脳コミュニケーションの調節に関与していることが分かった。

doi: 10.1038/d41586-023-00261-4

発生生物学:細胞アイデンティティーの調節因子を予測するCellOracle

An oracle predicts regulators of cell identity p.630

今回、CellOracleと呼ばれる計算ツールが、遺伝子のネットワークが胚発生時にどのように相互作用して細胞アイデンティティーをプログラムするかを予測できることが示された。このツールは、発生が調節される仕組みを解明する取り組みに磨きをかけるのに役立つはずである。

doi: 10.1038/d41586-023-00251-6

フォーラム:天文学:JWSTが系外惑星の空に窓を開く

JWST opens a window on exoplanet skies p.632

今回、遠く離れた惑星の前例のない観測結果から、そうした惑星がどのように形成された可能性があるかに関する手掛かりが明らかになった。このフォーラムでは、科学者たちが、一連の成果が大気化学の勝利であることを説明するとともに、これを可能にした技術を称賛している。

doi: 10.1038/d41586-023-00394-6

Perspective

がん免疫療法:CAR免疫細胞:設計原理、抵抗性および次世代

CAR immune cells: design principles, resistance and the next generation p.635

doi: 10.1038/s41586-023-05707-3

Articles

天文学:系外惑星の大気中の二酸化炭素の特定

Identification of carbon dioxide in an exoplanet atmosphere p.649

doi: 10.1038/s41586-022-05269-w

天文学:JWSTのNIRCamを用いた系外惑星WASP-39bの初期公開科学プログラム

Early Release Science of the exoplanet WASP-39b with JWST NIRCam p.653

doi: 10.1038/s41586-022-05590-4

天文学:JWSTのNIRSpec PRISMを用いた系外惑星WASP-39bの初期公開科学プログラム

Early Release Science of the exoplanet WASP-39b with JWST NIRSpec PRISM p.659

doi: 10.1038/s41586-022-05677-y

天文学:JWST NIRSpec G395Hによる系外惑星WASP-39bに関する初期公開科学プログラム

Early Release Science of the exoplanet WASP-39b with JWST NIRSpec G395H p.664

doi: 10.1038/s41586-022-05591-3

天文学:JWST NIRISSによる系外惑星WASP-39bに関する初期公開科学プログラム

Early Release Science of the exoplanet WASP-39b with JWST NIRISS p.670

doi: 10.1038/s41586-022-05674-1

量子物理学:表面符号論理キュービットのスケーリングによる量子誤りの抑制

Suppressing quantum errors by scaling a surface code logical qubit p.676

doi: 10.1038/s41586-022-05434-1

物性物理学:量子ツイスティング顕微鏡

The quantum twisting microscope p.682

doi: 10.1038/s41586-022-05685-y

物性物理学:グラフェンにおける流体力学的なプラズモンとエネルギー波の観測

Observation of hydrodynamic plasmons and energy waves in graphene p.688

doi: 10.1038/s41586-022-05619-8

エネルギー科学:極端な動作条件下におけるLiイオン電池の電解液設計

Electrolyte design for Li-ion batteries under extreme operating conditions p.694

doi: 10.1038/s41586-022-05627-8

環境科学:1900年以降の氷河堰止湖の極端でなく早く起きる決壊

Less extreme and earlier outbursts of ice-dammed lakes since 1900 p.701

doi: 10.1038/s41586-022-05642-9

進化学:現代型の多様性勾配は1500万年前に生じた

Origination of the modern-style diversity gradient 15 million years ago p.708

doi: 10.1038/s41586-023-05712-6

進化学:後期新生代の寒冷化が全球の海洋プランクトンの群集構造を変えた

Late Cenozoic cooling restructured global marine plankton communities p.713

doi: 10.1038/s41586-023-05694-5

考古学:ヒッタイト帝国の崩壊と同時期に起きた紀元前1198~1196年ごろの複数年にわたる深刻な干ばつ

Severe multi-year drought coincident with Hittite collapse around 1198–1196 bc p.719

doi: 10.1038/s41586-022-05693-y

神経科学:哺乳類大脳皮質における温度の細胞での符号化

The cellular coding of temperature in the mammalian cortex p.725

doi: 10.1038/s41586-023-05705-5

神経科学:NPAS4–NuA4複合体はシナプスの活動をDNA修復に共役させる

A NPAS4–NuA4 complex couples synaptic activity to DNA repair p.732

doi: 10.1038/s41586-023-05711-7

発生生物学:ネットワーク推定とin silicoでの遺伝子摂動による細胞アイデンティティーの分析

Dissecting cell identity via network inference and in silico gene perturbation p.742

doi: 10.1038/s41586-022-05688-9

免疫学:インフルエンザのワクチン接種から明らかになった、以前の軽症COVID-19による性的二型性のインプリンティング

Influenza vaccination reveals sex dimorphic imprints of prior mild COVID-19 p.752

doi: 10.1038/s41586-022-05670-5

免疫学:機能的なT細胞は個体寿命より長く続く細胞分裂と長寿命が可能である

Functional T cells are capable of supernumerary cell division and longevity p.762

doi: 10.1038/s41586-022-05626-9

細胞生物学:テロメアからミトコンドリアへのZBP1によるシグナル伝達は複製クライシスを仲介する

Telomere-to-mitochondria signalling by ZBP1 mediates replicative crisis p.767

doi: 10.1038/s41586-023-05710-8

計算生物学:深層学習によるルシフェラーゼのde novo設計

De novo design of luciferases using deep learning p.774

doi: 10.1038/s41586-023-05696-3

構造生物学:SARS-CoV-2のレプリカーゼによる基質選択の構造基盤

Structural basis for substrate selection by the SARS-CoV-2 replicase p.781

doi: 10.1038/s41586-022-05664-3

構造生物学:ヒトNa–Cl共輸送体の構造とチアジドによる阻害の機構

Structure and thiazide inhibition mechanism of the human Na–Cl cotransporter p.788

doi: 10.1038/s41586-023-05718-0

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