Nature ハイライト
生化学:デザイナー分子糊への道
Nature 585, 7824
分子接着性化合物(分子糊)は、タンパク質–タンパク質相互作用を誘発する。こうした化合物は、例えば酵素E3リガーゼをそれまでは接近不能だった標的に連結して、このネオ基質の分解を促進する。このような化合物は臨床で効果があるため、新たな分子糊の発見が待たれている。しかしこれまでのところ、こういった分子であるサリドマイド誘導体などは、偶然の発見によって得られたものである。今回N ThomäとB Ebertたちは、数百ものヒトがん細胞株で数千種類もの化合物を体系的に分析することにより、既知のサイクリン依存性キナーゼ阻害剤の1つであるCR8が、分子接着性分解因子としても機能することを明らかにした。CR8の詳しい解析により、この分子が糊として独特な機能を果たす仕組みの詳細が分子レベルで明らかになった。この結果は、標的結合機能を持つ化合物を作り替えて分子糊とするための一般的な方法につながるかもしれない。
2020年9月10日号の Nature ハイライト
電気工学:より持続可能な電子デバイスの冷却
物性物理学:圧力下の水素を計算する
地球化学:マントル深部への炭素の沈み込み
神経科学:C9orf72複合体はGAPとして働く
細胞生物学:生体分子の凝縮物と植物の温度感受性
ウイルス学:自然なHIV制御の構造的相関要因
コロナウイルス:アカゲザルにおけるSARS-CoV-2の病原性
コロナウイルス:アカゲザルのCOVID-19に対するレムデシビル治療
加齢:代謝は上手に年を取らない
生化学:デザイナー分子糊への道