Nature ハイライト 医学:アルツハイマー病初期の徴候 2006年3月16日 Nature 440, 7082 今週号には、アルツハイマー病の最初の分子的な原因の1つと予想される物質が報告されている。その物質はアミロイドβペプチドの集合体で、細胞外に蓄積して記憶に影響を与える。今回の発見から、記憶喪失というより深刻な徴候が現れるずっと前にこの疾患を見いだし、おそらく予防もできる可能性が出てきた。 アルツハイマー病の発症リスクが高い人では、重度の臨床症状が現れる数年前から、軽い記憶障害と脳の異常が認められる。K Asheたちは、アルツハイマー病に関係するヒトアミロイドβ前駆体タンパク質(APP)を産生する遺伝子改変マウスを用いて実験を行った。ヒトと同様、このマウスでも中齢で記憶障害が生じ、さらにそれは、一般にこの疾患に関係するとされている不溶性アミロイドβ斑が形成される以前に起こっていた。 マウスでみられたこの早期の記憶障害は、12個のアミロイドβペプチドからなる複合体が細胞外に蓄積することによって引き起こされていた。この複合体を健康なラットの脳に注入すると、一時的な記憶障害がみられた。これらのアミロイドβペプチドの集合体が、アミロイド斑や神経細胞死とは無関係に記憶障害を起こし、ある環境下でアルツハイマー病発症につながる一連の現象を引き起こす可能性があると著者たちは述べている。 2006年3月16日号の Nature ハイライト 進化:羽毛恐竜の仲間なのに羽毛のない恐竜 宇宙:銀河系にもあった「DNA」のような二重らせん 構造生物学:ホタルの色の秘密に光 医学:アルツハイマー病初期の徴候 物理:3つ一緒でも手はつながない 生態:生物保全活動の費用対効果を最大にするには 目次へ戻る