Nature ハイライト
遺伝学:先天性筋ジストロフィーの治療にCRISPRを使う
Nature 572, 7767
先天性筋ジストロフィー1A型(MDC1A)は、ラミニンα2の変異が原因で、末梢神経のミエリン化や筋繊維の安定性が損なわれる。ラミニンα2と同類のタンパク質であるラミニンα1(Lama1)の発現をマウスモデルで上昇させると、筋消耗や麻痺を補償して改善できることが分かっている。しかし、Lama1遺伝子は大型で、臨床での遺伝子治療に使われるベクターが何であれ、そのパッケージング容量を超過してしまうため、Lama1を上向き調節することは難しい。D Kemaladewiたちは今回、CRISPRを介した遺伝子活性化システムを使って、マウスの骨格筋と末梢神経でLama1の発現を促進した。発症前のマウスでは、この方法によって筋繊維症と麻痺が予防された。意外にも、この治療法はすでに症状が見られているマウスにも効果があることが明らかになった。従って、これらの知見は、Lama1の治療的に意義のあるような上向き調節が可能だという原理証明となる。変異とは無関係のこの手法は、MDC1Aの患者に対しては新たな治療法への道を開くものであり、他のさまざまな疾患修飾遺伝子にもさらに広く適用できる可能性がある。
2019年8月1日号の Nature ハイライト
気候科学:エアロゾルが雲の厚さに及ぼす影響はわずかである
感染症:蚊の侵入種の野外におけるほぼ完全な除去
生理学:脳脊髄液排出のホットスポット
構造生物学:Gタンパク質の活性化を見る
光物理学:ポラリトン–ポラリトン相互作用を増強する
物性物理学:魔法角ねじれ2層グラフェンにおける分光観測
医学研究:臨床で急性腎障害を予測する
遺伝学:先天性筋ジストロフィーの治療にCRISPRを使う
植物科学:免疫に関連するカルシウムシグナル伝達の解明