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遺伝学:先天性筋ジストロフィーの治療にCRISPRを使う

Nature 572, 7767

先天性筋ジストロフィー1A型(MDC1A)は、ラミニンα2の変異が原因で、末梢神経のミエリン化や筋繊維の安定性が損なわれる。ラミニンα2と同類のタンパク質であるラミニンα1(Lama1)の発現をマウスモデルで上昇させると、筋消耗や麻痺を補償して改善できることが分かっている。しかし、Lama1遺伝子は大型で、臨床での遺伝子治療に使われるベクターが何であれ、そのパッケージング容量を超過してしまうため、Lama1を上向き調節することは難しい。D Kemaladewiたちは今回、CRISPRを介した遺伝子活性化システムを使って、マウスの骨格筋と末梢神経でLama1の発現を促進した。発症前のマウスでは、この方法によって筋繊維症と麻痺が予防された。意外にも、この治療法はすでに症状が見られているマウスにも効果があることが明らかになった。従って、これらの知見は、Lama1の治療的に意義のあるような上向き調節が可能だという原理証明となる。変異とは無関係のこの手法は、MDC1Aの患者に対しては新たな治療法への道を開くものであり、他のさまざまな疾患修飾遺伝子にもさらに広く適用できる可能性がある。

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