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日本の重要科学プロジェクトに予算復活の望み

原文:Nature 462, 835(号)|doi:10.1038/462835a|Hope for Japan's key projects

David Cyranoski

日本で50年ぶりの政権交代が起こり、多くの日本国民は、民主党鳩山新政権に、国の再生を期待した。しかしその後、新政権が打ち出した政策により、研究者たちは、予算をめぐる、ジェットコースターのようなめまぐるしい変化に翻弄されている。

科学者は、鳩山由紀夫首相が科学技術予算削減の提案を受け入れないことを願っている。

S. Kambayashi/AP

今年9月、日本で50年ぶりの政権交代が起こり、多くの日本国民は、民主党鳩山新政権に、国の再生を期待した。しかしその後、新政権が打ち出した政策により、研究者たちは、予算をめぐる、ジェットコースターのようなめまぐるしい変化に翻弄されている。内閣府に設置され、鳩山由紀夫首相が議長を務める2つの機関が、11月から12月の数週間に、主要科学プロジェクトの将来的な財政について、根本的に異なる提言を行ったからだ。

官僚組織の「脂肪」をそぎ落とすことを目的として9月に発足した行政刷新会議(GRU)は、次世代スーパーコンピューター開発、大型放射光施設SPring-8(兵庫県佐用町)、地球科学研究を含む多くの重要科学プロジェクトについて、予算の大幅削減を提言した。こうした予算削減に対しては、科学者から激しい抗議の声が上がった(Nature 2009年12月3日号557ページ;「日本での科学技術予算削減提言に激しい抗議の声」参照)。ところが12月第2週になって、日本の科学技術政策の最高決定機関である総合科学技術会議(CSTP)が、これらの事業やその他多くの科学事業に対する支援を継続すべきだという意見を示した。

例えば、SPring-8や博士課程研究プログラムの強化を目的としたグローバルCOEプログラムについては、予算の3分の1以上の縮減が提言されていたが、総合科学技術会議は、「優先して資源を配分すべきもの」とした。また、完全廃止の可能性もあった次世代スーパーコンピューターについても支援すべきだ、とした。

日本では政府の政策決定が、通常、密室で官僚によって作り上げられ、調和のとれたコンセンサスとして発表されるため、今回の矛盾するような状況に研究者は当惑している。スーパーコンピューター事業の渡辺貞プロジェクトリーダーは、「政策決定過程が不透明で、非常に不安なのです」と語る。

来年度予算の政府案は12月後半に決定されるが、鳩山首相は、総合科学技術会議の提言を「貴重な意見」といい、「予算に十分に反映できるように努力していきたい」と語った。多くの人々は、鳩山首相が、予算削減の提案に対する激しい抗議のために、総合科学技術会議の提言を受け入れる方向に傾いているのかもしれない、と考えている。科学政策を専門とする政策研究大学院大学(東京都)の角南篤准教授は、「今の時点では何ともいえませんが、我が国の首脳が問題を認識したことは間違いないと思います」と話す。

行政刷新会議は、外部から十分な情報を入手せずに、原則として官僚が1時間で事業仕分けチームにプロジェクトを説明しただけで予算削減を勧告したため、科学者の批判を受けた。なお、行政刷新会議は、数多くの科学者の参加を得て、スーパーコンピューター事業に関する公開討論会を実施する計画であることが、日本のメディアによって報じられた。

研究者はといえば、大事なプロジェクトが中止の危機に瀕したことで、一般国民や官僚、外部の評価者に、プロジェクトの正当性を示す必要性に気づいた。実際、スーパーコンピューター事業のリーダーたちはウェブサイト上で、事業の重要性に関する「よくある質問と回答」を掲載した。そこにはこんな項目も含まれている。「次世代スパコンの優れた点を説明して下さい」。

渡辺プロジェクトリーダーは、研究チームがスーパーコンピューター事業に国民の関心を引くための長期的戦略を策定できていない、と話す。しかしその一方で、スーパーコンピューターが、ナノ科学、生命科学、環境科学など日本の主要な研究分野において大きな役割を果たすことを強調したいと考えている。「我々は、この点を人々に伝えなければならないのです」。

角南准教授も、日本の研究者は予算の獲得に国民の支持が得られるのが当たり前と思ってはならないと考えており、「たとえスーパーコンピューターとSPring-8の予算が小幅な減額ですんだとしても、科学者はもっと国民と向き合っていく必要があります」と語っている。

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