Research Press Release
【気候科学】淡水湿地でのメタンの発生と分解
Nature Communications
2015年7月1日
淡水湿地が重要なメタン吸収源(シンク)であることを明らかにした論文が、今週掲載される。湿地は、大気中にメタン(強力な温室効果ガス)を放出する自然の供給源として最大のものであることが知られているが、湿地で発生するメタンの最大50%が湿地での嫌気的酸化によって破壊されている可能性が判明したのだ。
メタンの嫌気的酸化は、微生物が介在する過程であり、極めてわずかな酸素しか含まれていない海洋堆積物と淡水堆積物において起こる。この過程では、通常、メタン分子が硫酸と硝酸との反応によって分解され、微生物にとってのエネルギーと害の少ない老廃化合物が発生する。
今回、Samantha Joyeたちは、米国内の大きく異なる地域(熱帯、温帯、冷温帯)に位置する3つの大規模な淡水湿地を調べて、嫌気的酸化速度を測定した。この測定結果からは、メタンの破壊速度が年間約200テラグラムであることが示唆されている。これは、海洋環境でのメタン破壊速度に近いが、淡水環境についてこれまで考えられていた値よりもかなり高いことは確かだ。全球的なメタン収支を解明することは今後100年間の気候の変化を予測する上で重要なことであり、メタン循環を解明すれば、現在の計算を修正できるようになるだろう。
doi:10.1038/ncomms8477
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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