神経科学:鳥の脳が明かす言語の秘密
Nature
2025年3月20日
オウムと人間は、複雑な音を出すのに似た脳のメカニズムを使っているかもしれないことを報告する論文が、Nature に掲載される。この研究では、人間の言葉を模倣することで知られるオウムの一種であるセキセイインコ(budgerigars)の脳に、人間の脳の言語関連領域と似た働きをする特殊な領域があることが明らかになった。このため、オウムは言語の研究や言語療法の開発に適したモデルとなる可能性がある。
人間の言語は複雑なコミュニケーション形態であり、言葉を生成するには発声器官を正確に制御する必要がある。発声能力を持つのは人間だけではない。鳥もこのコミュニケーション形態を用いているが、その方法は異なる。特にセキセイインコは、人間の言語を模倣するなど、さまざまな発声能力を持つ。このため、研究者は、音の生成を支える神経プロセスは、鳥と人間の間で類似している可能性があるという仮説を立てた。
Zetian Yangと Michael Longは、オウムと鳴禽類(キンカチョウ〔zebra finches〕、セキセイインコと比較すると音声学習能力が限定的)の神経記録を研究し、音声生成が脳内でどのようにエンコードされているかを解明した。著者らは、2種類の鳥が異なる脳領域を使って発声を制御していることを発見した。セキセイインコは、前弓状核(anterior arcopallium)の中心核を使用しており、これは脳幹を通して喉頭嚢(syrinx;鳥の声帯)とつながっており、多様な音声の生成を可能にしている。オウムがより複雑な音のシーケンスを学習する方法に関するこうした洞察は、オウムをモデルとして用いることで、人間の音声生成やコミュニケーション障害についてより深く理解できる可能性がある、と著者らは結論づけている。同時掲載されるNews & Viewsの記事でJoshua Neunuebelが、「YangとLongの研究は、神経科学者による音声学習の理解を深めるだけでなく、『鳥頭』と呼ばれることが実際には褒め言葉であるかもしれないことを裏付けるものである」と、書いている。
- Article
- Published: 19 March 2025
Yang, Z., Long, M.A. Convergent vocal representations in parrot and human forebrain motor networks. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08695-8
doi:10.1038/s41586-025-08695-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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