【微生物学】幼若期の抗生物質の使用がその後の発育に影響を及ぼす可能性
Nature Communications
2015年7月1日
ヒトの子どもにおける抗生物質の使用を模倣するように設計されたマウスモデルを使った研究で、一般的に使用される抗生物質によって仔マウスの発育に変化が生じることが明らかになった。幼若マウスに抗生物質を投与すると、総体重の増加と骨の成長が一時的に加速し、腸内マイクロバイオームの多様性と個体群構造に長期的な変化が起こったのだ。この研究成果の報告が、今週掲載される。
米国での抗生物質の使用量は10歳未満の子どもが最も多く、合計で年間4000万コースを超えている。これまでに、低量投与の継続による影響を調べる動物研究が行われているが、ヒトの場合には急性感染症を治療するための短期コースで10~100倍の抗生物質が投与されるのが通常であるため、こうした動物研究がヒトにおける抗生物質の使用にとってどれほどの意味を持っているのかは分かっていない。
今回、Martin Blaserたちは、ヒトにおける抗生物質の使用が微生物叢と発育に及ぼす影響について解明を進めるために、幼若期における抗生物質の治療量投与を模倣するマウスモデルを開発した。Blaserたちは、子どもに処方されることが最も多い抗生物質であるアモキシシリンとタイロシンをモデルマウスに投与した。その結果、幼若期における抗生物質の投与によって体重と骨の成長が短期的に増えることがわかった。また、腸内マイクロバイオームの多様性と構成については、抗生物質の投与から数か月間持続する長期的変化が観察された。こうした影響は、コース数と抗生物質の種類に依存していた。骨の成長と体重に対する影響が微生物叢と関係しているのかどうかは明らかになっていないが、以上の新知見は、ヒトにおける抗生物質のガイドラインとリスクを再検討する必要のあることを示している。
doi:10.1038/ncomms8486
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