地震はルシ泥火山噴出の原因ではなかった
Nature Geoscience
2015年6月30日
大きな災害をもたらしたインドネシア・ルシ泥火山の噴出の引き金は、最初の噴出の2日前に起きたジョグジャカルタ地震ではなさそうであると、Mark Tingayが今週のオンライン版に発表した記事で書いている。
2006年5月に始まったルンプール・シドアルジョあるいはルシ泥火山の噴出は、地中から数十万立方メートルの泥を放出し、現在も続いている。泥の流れにより、ほぼ4万人以上の人々が移住を余儀なくされており、経済的損失は数十億ドルにものぼる。噴出の原因については多くの議論がなされている。仮説には、ジョグジャカルタ地震による地震波の通過を引き金にした自然災害であるというものや、近傍の天然ガス掘削作業に関連した人為的なものという説が含まれている。
著者たちは、ジョグジャカルタ地震前後の数日間に噴出口の近くにある孔井から放出されたガスの濃度と成分を分析した。しかし、この地震の地震波が地下の粘土層の液状化を起こし泥の噴出を促した場合に予想される、地震直後の噴出口からのガス放出増加を示す記録は見つからなかった。さらに、ガス成分の解析結果は、噴出した流体が粘土層由来ではないことを示している。その代わりに、流体は深部火山岩層由来であり、地上に噴出する過程で泥と混合した可能性を示している。孔井底部は、深部火山岩層内に達していると考えられている。Tingay等は、これらの観測は掘削作業が泥噴出の引き金となったという仮説と矛盾しないと述べている。
このプレスリリースはCorrespondence記事に基づいたものであり、他の研究論文には基づいていないが、データの正確さを期すために査読は行われている。Correspondence記事は、社会的重要性のある事項について科学的観点を提供するものである。
doi:10.1038/ngeo2472
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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