【神経科学】複数の脳の共同作業
Scientific Reports
2015年7月9日
ブレイン・ブレイン・インターフェースの利用について記述された2報の研究論文が、今週掲載される。第1の論文では、複数のサルの知力を利用したブレイン-マシン・インターフェースによって共通の課題(仮想空間内に存在しているサルの分身のアームの運動を制御すること)が完了したことが報告されている。第2の論文では、4匹の成体ラットが関係するブレイン-ブレイン・インターフェースによって単純な計算問題が解けることが報告されている。
ブレイン-ブレイン・インターフェースは、協調して働く複数の動物の脳によって形成されたネットワークのことで、こうした動物は感覚情報と運動情報をリアルタイムで交換できるようになっている。
第1のMiguel Nicolelisたちの研究では、4匹のアカゲザルの脳内の運動領域と感覚領域の数百個のニューロンの活動が記録された。次に2匹あるいは3匹のアカゲザルをそれぞれ別の部屋に座らせた。各部屋のコンピューター画面上には、サルの分身のアームが表示されている。このアカゲザルの課題は、ジョイスティック(手による制御)またはアームの運動を受動的に観察することによってアームを標的物体に向かって動かすことだった。後者の場合には、アカゲザルの脳の活動の記録によってアームを動くようにした(脳による制御)。その結果、脳による制御を行う複数のアカゲザルは、訓練によってそれぞれの行動の協調性を高めていき、脳の活動も強く相関するようになり、この課題における成績が向上した。
第2の研究では、4匹のラットが関与するBrainetという名のブレイン-ブレイン・インターフェースが構築され、このBrainetが一連の計算問題を解く能力を有しているかどうかが判定された。4匹のラットの一次体性感覚皮質には多電極アレイが埋め込まれ、ニューロンの電気活動が記録されると同時に仮想空間内の触覚情報が他のラットの脳に送信された。そして、さまざまな構造設計によるBrainetが用いられて、ラットが一連の課題(例えば、刺激を2つの区分に分類し、受信した気温と気圧の情報から雨が降る確率が上昇するのか低下するのかを予測すること)を行うようにした。それぞれの課題で、Brainetの成績は、ラット個体と同等かそれ以上だった。特に複数の計算を必要とする課題(例えば、記銘や並列処理)で、Brainetの成績はラット個体を有意に上回っていた。
doi:10.1038/srep10767
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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