30年間の海洋温暖化がクルイムスク洪水をもたらした
Nature Geoscience
2015年7月14日
ロシアのクルイムスクで大規模な被害を出した突発的な洪水の引き金となった2012年7月の記録的降雨は、それ以前の30年間に黒海で起きた海面温度の上昇なしには起きなかったという研究報告が、今週のオンライン版に掲載される。著者たちは、この温暖化の傾向が極端な降雨を起こす大気力学的変化の引き金となったことを見いだした。
極端な降雨現象は段階的な気候温暖化にその原因を帰すことが難しいが、それは自然の変動を除外することが難しいからである。しかし、そのような情報は特に求められている。Edmund Meredith等は、高分解能大気モデルによる一連のシミュレーションを実施し、しばしば極端な降雨と関連付けられる対流嵐の生成に対する海面温度上昇の効果を調べた。
クルイムスク地域を研究することで、彼らは、観測された黒海の海面温度によるシミュレーションでは、過去30年の増加傾向を取り除いた場合のシミュレーションと比較して、地域的な降雨量は平均して300%上昇することを見いだした。特に、シミュレーションは、過去の海洋表面の温暖化なしには、深部対流(熱が駆動する暖かく湿潤な空気の大気上層への輸送であり、雷雲中で活発で、しばしば大きな降雨をもたらす)はその地域では発達しないことを示している。これにより、この発見は極端な降雨現象の急激な増加と海面温度の緩やかな上昇とを直接的に結び付ける物理機構を明らかにしている。
関連するNews&Viewsの記事で、Friederike Ottoはこの研究が「事象の理解とその起こりやすさの評価を結び付ける重要な段階を明らかにしている」と述べている。
doi:10.1038/ngeo2483
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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