【生物学】コーヒーノキの害虫の弱点
Nature Communications
2015年7月15日
コーヒーノキにとって最も破壊力の大きな害虫であるコーヒーノミキクイムシ(Hypothenemus hampei)の腸内微生物によってカフェインが分解されることが明らかになった。カフェインは、分解されなければコーヒーノミキクイムシに毒性をもたらすと考えられているため、今回明らかになった腸内微生物叢の役割からコーヒーノミキクイムシの駆除に役立つ新たな方法が導き出される可能性がある。この研究結果についての報告が、今週掲載される。
コーヒーノミキクイムシは、全世界でコーヒー豆の収量が最大80%減少したことの原因であり、生のコーヒー豆の中だけで生活環を完了する唯一の昆虫として知られている。コーヒーノミキクイムシ感染の社会経済的影響のために駆除方法の研究が活発に行われるようになったが、最近までコーヒーノミキクイムシの基礎的代謝の解明は進んでいなかった。
今回、Javier Ceja-Navarro、Eoin Brodieたちは、主要コーヒー生産国(7カ国)で採取されたコーヒーノミキクイムシの標本の腸内に特定のPseudomonas種など一般的な腸内微生物のコア個体群が生息していることを明らかにした。そして、抗生物質を使ってコーヒーノミキクイムシの腸内微生物叢を実験的に不活性化したところ、コーヒーノミキクイムシがカフェインを無毒化する能力が失われ、生存可能な個体の数が対照群を比較して有意かつ相当程度に減少したことも分かった。カフェインは、通常、強力な殺虫剤として作用する。さらに、抗生物質を投与されたコーヒーノミキクイムシに腸由来のPseudomonas株の1つを注入したところ、カフェインの存在下で繁殖するようになった。今回の研究結果は、コーヒーノミキクイムシが大量のカフェインを摂取しても生存し続ける能力を狙い撃つ新たな生物的防除方法の開発に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms8618
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