Research Press Release

【気候変動】海洋がストレスを受けている

Nature Communications

2015年7月15日

海洋の約66%と各国が管轄する海域の約77%で人間活動によるストレス要因の影響が増大していることが明らかになった。今回の研究は、2008年~2013年の変化を測定したもので、こうした影響の増加が気候変動の圧力によっていることを示唆している。この研究結果についての報告が、今週掲載される。

多くの人間活動(例えば、環境汚染、海運業、海水準上昇)が海洋生態系に圧力を加えている。しかし多くの地域では、最も影響の大きいストレス要因やストレス要因の経時的変化と累積的影響についてほとんど解明されていない。

今回、Benjamin Halpernたちは、5年間にわたる地球上の海洋生態系に対する漁業、気候変動、海洋・陸上のストレス要因の累積的影響をモデル化した。その結果、海洋の5%が深刻な影響を受けており、圧力が高まっているため早急な対応が必要となっている。その一方で、地域的に減少しているストレス要因もある。例えば、多くのヨーロッパ諸国で行われている破壊的な底魚漁業(底引き網漁)と中東の一部で行われている高混獲率の遠洋漁業(はえ縄漁)である。

今回の研究結果をまとめると、気候変動によるストレス要因(海面水温の異常、海洋酸性化、紫外線放射)が全球的に増加していることが、人間活動による影響の増加の背景にある主たる駆動要因であったことが示されている。また、特定のストレス要因の累積的影響が減少している徴候はあるが、今回の研究結果は、累積的影響の全球的な増大が一般的な傾向であることを明らかにしており、特に沿岸域でそれが顕著に表れている。今回の研究結果は、気候変動に取り組んで海洋生態系の状態を維持、改善することの重要性を確認しており、Halpernたちは、今回の研究結果が、保全管理を優先的に行うべき領域に関する指針となることを期待している。

doi:10.1038/ncomms8615

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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