致命的な小児白血病の新たな治療法
Nature Genetics
2015年7月28日
これまで長期治癒を達成できなかった希少で致命的な小児白血病に対する新たな治療法の可能性を報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、この小児白血病に関連する特異的な遺伝的変異も同定された。
小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の亜型であるTCF-HLF陽性ALLは、小児ALL症例全体の1%に満たないが、診断後2年以内の再発率と死亡率が非常に高い。
今回、Jean-Pierre Bourquin、Martin Stanullaの研究グループは、TCF-HLF陽性ALL患者が持つ変異と治療法に反応する類似のALL亜型の患者が持つ変異とを比較した。その結果、TCF-HLF陽性ALLに特異的な複数の変異遺伝子が同定されたが、これらの変異遺伝子がTCF-HLF陽性ALLが致命的である理由を説明するうえで役立つ可能性がある。また、今後の研究によって、これらの変異が新薬の作用標的となる可能性もある。次にBourquinたちは、患者のTCF-HLF陽性腫瘍細胞をマウスに移植し、複数の化学療法薬を使って試験を行うことで、既存の薬剤を用いる新たな治療法の可能性を模索した。標準的なALL治療法は予想通り効果を示さなかったが、他のクラスの薬剤(一部は臨床開発中)が有望なことが明らかになった。そのうちの1つであるベネトクラックスは、すでに他のALL亜型に対してある程度の有効性を示し、特にマウスのTCF3-HLF ALLに有効だった。Bourquinたちは、ベネトクラックスについて、TCF-HLF陽性ALL患者の治療法としての可能性を調べるべきだと考えている。
doi:10.1038/ng.3362
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