【免疫】MERSコロナウイルスワクチンの有力候補
Nature Communications
2015年7月29日
中東呼吸器疾患群コロナウイルス(MERS-CoV)に対するワクチンの有力候補について記述された論文が、今週掲載される。マウスとアカゲザルを用いた実験が行われ、このワクチン候補は、MERS-CoVのJordanN3株に対する免疫を引き起こすことに成功した。
MERS-CoVが最初に発見されたのは2012年のことで、その後の1118~1142症例と423~465死亡例の原因がMERS-CoVだとされている。しかし、その伝播過程は、ほとんど解明されていない。動物がMERS-CoVの保有宿主ではないかと疑われているが、未確認だ。MERS-CoVを原因とするヒトの重症呼吸器疾患であるMERSの治療法は現在のところ存在していない。
今回、Wing-Pui Kong、Barney Grahamの研究グループは、マウスとアカゲザルにMERS-CoVのタンパク質の1つをコードするDNAと短縮型のMERS-CoVタンパク質を接種することによって、血中にさまざまな中和抗体を産生できることを報告している。また、このようなアカゲザルの免疫化には、MERS-CoVによる肺炎を予防する効果も認められた。この免疫戦略は、MERS-CoVの内部と外部の複数の構造を標的とするMERS-CoV中和抗体を誘導することに初めて成功しており、MERS-CoVが変異によって免疫系による検出を回避する能力を低減できる可能性がある。
また、このタイプのワクチンがMERS-CoVの動物モデルを使って検証されたのは今回が初。ヒト以外の霊長類における防御効果が実証された初めてのワクチン候補となった。ただし、霊長類におけるMERS-CoV感染はヒトの場合よりも病気の進行が相当に緩やかなため、このワクチン候補のヒトの重度の症状に対する防御効果については明らかではない点に留意が必要だ。ヒトにおける安全性と有効性を明確にするためにさらなる研究が必須となっている。
doi:10.1038/ncomms8712
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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