【生物学】ストレスと行動変化の間に微生物が介在している
Nature Communications
2015年7月29日
幼少時にストレスを受けたマウスに見られる不安行動と抑うつ行動は、ストレスによる腸内微生物叢の変化に依存しているという結論を示した論文が、今週掲載される。今回の研究で、ストレスを受けたマウスには腸内微生物叢の有無にかかわらずホルモンの変化が見られたが、行動の変化が見られたのは腸内微生物をもつマウスだけだった。
仔マウスを母親から周期的に引き離すという手法は、行動と腸の機能に変化を生み出す幼少時のストレスの影響を調べる研究に用いられてきた。マウスの行動の変化は、腸内微生物叢と視床下部-下垂体-副腎軸(HPA)の変化と関連すると考えられてきた。HPAは、体内の主要な神経内分泌系の1つだ。
今回、Premysl Bercikたちは、母親から引き離されたマウスモデルにおける行動の変化に対する腸内細菌の寄与を調べた。この研究では、正常な腸内微生物叢を有するマウスと無菌マウスの2つのグループが用いられた。いずれのグループにも母親から引き離されたマウスが含まれており、それ以外のマウスは対照群とされた。また、第1のグループの腸内微生物叢が無菌マウスの一部に移植された。
その結果、いずれのグループでもストレスによるHPAの活性が同様の変化を示した。しかし、無菌マウスにおいては、母親から引き離されたマウスの腸内微生物叢を移植された場合を除けば、不安様行動やうつ様行動は見られなかった。以上の結果は、幼少時のストレスと関連した行動の変化が起こるために腸内微生物叢の変化が必要なことを示している。この新知見がヒトにも当てはまるのかどうか、また腸内微生物を標的とする治療法が精神疾患や腸疾患の患者に有効か否かを検証するためにはさらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/ncomms8735
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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