地球温暖化対策に関する悲観的見通し
Nature Communications
2015年8月4日
負の排出技術(例えば、大気中の二酸化炭素を除去する技術)を利用して22世紀の地球温暖化を摂氏2度未満に抑えることは実現不能である可能性が高いとした研究論文が、今週掲載される。現行の技術は、従来の方法による気候変動の緩和という最も楽観的なシナリオを除く全てのシナリオで、負の排出の必要条件を満たす能力を備えていないことが、今回の研究で明らかになっている。
負の排出技術は、人間活動によって生じる二酸化炭素を生産地で捕捉すること、二酸化炭素を大気中から直接除去すること、自然の炭素吸収源を工学的に増強することなどがあり、地球温暖化による気温上昇を産業革命以前の気温と比べて摂氏2度未満に抑えて危険な気候変動を回避するための要件として引き合いに出されることが多くなった。しかし、こうした負の排出技術は完成しておらず、気温上昇を摂氏2度未満に抑えるために必要な負の排出のレベルも分かっていない。
今回、Thomas Gasserたちは、最先端の炭素-気候結合モデルを使って、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のRCP2.6温暖化シナリオにおいて摂氏2度未満の目標を達成するために必要な従来の緩和策(化石燃料の消費量削減)と負の排出のトレードオフを定量化した。RCP2.6シナリオは、二酸化炭素排出量が2010年から2020年の間にピークに達することを前提とする楽観的なシナリオで、他のシナリオと比べて必要とされる緩和策と負の排出のレベルが低い。Gasserたちは、非常に積極的な緩和シナリオにおいても、負の排出による年間0.5~3ギガトンの炭素の抽出と50~250ギガトンの炭素貯蔵能力が必要となり、負の排出が従来の緩和策を伴わない場合には、摂氏2度未満という目標の達成可能性は低いと結論づけている。
doi:10.1038/ncomms8958
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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