オフィスビルの空調に存在する性差による偏り
Nature Climate Change
2015年8月4日
オフィスビルの室温を定める基準は、平均的男性の代謝率に基づいているため、女性の冷暖房のニーズが適切に反映されておらず、オフィスの空調システムが本来的に非効率なものとなっている可能性があるという報告が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究結果は、1960年代に制定された室内の空調基準を見直して、代謝率の性差を考慮に入れることで、必要以上の夏の冷房と冬の暖房を避けてビルのエネルギー消費量を減らせる可能性があることを明らかにしている。
オフィスビルの空調システムは、ビルの入居者が体の震えのような調節的変化や発汗によって自分自身の体温を維持する必要性を低下させている。空調システムの設計は、40歳の男性(体重70 kg)の安静時代謝率が1つの前提条件となっており、女性が快適な体温を保つために必要な体外からの加熱と冷却の量的評価が過大である可能性がある。
今回、Boris KingmaとWouter van Marken Lichtenbeltは、軽度の事務作業を行う16人の若齢女性の生理的特性を調べ、その代謝率が標準値より有意に低いことを明らかにした。この結果は、居心地良く感じる夏の冷房が今より弱いレベルである可能性を示唆している。Kingmaたちは、現在の標準代謝率を実際の値と置き換えて、無駄な冷暖房をやめるべきだと主張している。また、Kingmaたちは、年齢、性別、体の大きさの影響を考慮に入れ、関連する代謝率を作業内容に応じて調整することでさらなる利益が得られると考えているが、それが正しいかどうかを明らかにするためにはさらなる研究が必要だ。
同時掲載されるJoost van HoofのNews & Views記事では、「この研究結果は、熱的快適性基準の次回改訂にとって重要な意味を持つ可能性があるが、不動産開発業者、基準制定委員会、ビル設備エンジニアを十分に納得させるためには、実地調査による大規模な再評価が必要となる可能性がある」と記されている。
doi:10.1038/nclimate2741
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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