【動物学】ミミズが植物の化学防御をすり抜ける方法
Nature Communications
2015年8月5日
ミミズが腸内で独自のクラスの化合物を産生して植物の化学的防御物質の損傷作用から身を守っていることを明らかにした論文が、今週掲載される。この化合物は、食器洗い洗剤やその他の洗浄液と同じように界面活性剤として作用し、化合物間の表面張力を低下させ、あるいはその化学的特性を阻害する。これは、土壌中での落葉落枝の再循環という難題に対する重要な適応といえる。
数多くの植物が、陸上の草食動物に食べられないようにポリフェノール(タンパク質結合性を有する化学的防御物質)を産生している。ポリフェノールは、それを摂取した生物の腸内酵素の作用を阻害すると考えられている。こうした防御戦略の結果、ポリフェノールが落葉落枝に残存しており、地中で餌を得るミミズなどの分解者生物は食餌上の難題に直面している。 今回、Manuel Liebekeたちは、さまざまな手法を用いて、植物性ポリフェノールを摂取したミミズの腸液の化学組成を分析し、消化器系の中で腸液の活性が最も高い部位を可視化した。その結果、これまでに報告されたことのない界面活性を有する代謝産物群が腸内に局在していることが分かった。この代謝産物は、ミミズを含む無脊椎動物の分類群のラテン名“Megadrile”にちなんで“drilodefensin”と命名された。
今回の研究では、drilodefensinが14種のミミズの腸内に存在していたが、その近縁種であるヒルやイトミミズなどの無脊椎動物の分類群からは見つからなかった。このことは、drilodefensinがミミズ種に特異な化合物であることを示唆している。また、ミミズの野外個体群にポリフェノールが豊富に含まれる食餌を与えたところ、drilodefensinの濃度が上昇した。このことは、全世界で年間推定100億トンの植物炭素の代謝回転においてdrilodefensinが重要な生態学的役割を果たすことを示している。
doi:10.1038/ncomms8869
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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