【神経科学】オメガ3の精神病予防効果は長続きする
Nature Communications
2015年8月12日
統合失調症を発症するリスクの高い若者を対象として、オメガ3サプリメントを用いた12週間の介入試験が行われ、精神病への進行の長期的リスクとその他の精神病の発症リスクが低下したという報告が、今週掲載される。介入から約7年後に行われた追跡検査では、オメガ3サプリメントを投与された41人の大多数に重度の機能障害が見られず、精神病の発症を示す徴候もなかった。
統合失調症は、思春期又は成人期初期に発症するのが通例で、患者の大多数は、さまざまな臨床的に重要な徴候と症状を徐々に示すようになる。精神病を発症する可能性の高い若者を見つけ出すために開発されたのが「ウルトラハイリスク基準」という診断基準だ。これまでの研究では、オメガ3とオメガ6という多価不飽和脂肪酸(PUFA)が多くの精神疾患の発症に関係していることが判明し、いくつかの介入試験で、オメガ3 PUFAサプリメントの投与によって精神病の症状を緩和できることが明らかになった。
Paul Amminger たちは、オメガ3 PUFAを添加した食事を13~25歳の参加者に与えて、精神病の初回エピソードが最長1年間現れなかったことを2010年に報告した。今回、Amminger たちは、当初の81人の参加者のうち71人について、オメガ3 PUFAによる介入の長期的効率(介入から6.7年後)を報告している。オメガ3を摂取した被験者の9.8%(41人中4人)が精神病を発症したのに対して、プラセボを摂取した被験者の40%(40人中16人)が精神病を発症していた。また、プラセボを摂取した被験者の方が、精神病を早期に発症し、他の精神病の全般的な罹患率も高かった。
今回の研究に限界があるとすれば、サブグループの解析をさらに行えるほどの規模に達していないサンプルサイズである。PUFAサプリメントによって精神疾患が緩和される機構を発見するためにはさらなる研究が必要だ。
doi:10.1038/ncomms8934
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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