【神経科学】活動中の神経系全体の可視化
Nature Communications
2015年8月12日
発生過程にあるショウジョウバエの中枢神経系(CNS)全体にわたる神経活動を把握する方法についての報告が、今週掲載される。今回の研究は、高速顕微鏡と計算ツールを組み合わせた構成を用いることで、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の幼虫の単離されたCNS全体における神経活動の同時画像化に成功した。
最近の画像化技術の進歩、例えば、光シート顕微鏡は、高速、高分解能での大量の神経組織の三次元画像化を実現した。こうした技術進歩に加えて、特定の細胞集団の神経活動を検出する技術が改良されたことで、動物が特定の活動を行っている間の神経系の全ての部分の活動を記録することが可能になった。しかし、これまでのところ、この技術は、発生過程にあるショウジョウバエといった比較的大きなモデル生物の中枢神経系全体の画像化に応用されたことはなかった。
今回、Philipp Kellerたちは、試料調製と神経活動の画像化と画像解析に関して数多くの方法論的改良を導入して、単離されたショウジョウバエ幼虫のCNS全体の画像化を可能にした。Kellerたちはこの方法を用いて、CNS全体の画像化を1秒間に5回行いながら、CNS全体における協調した運動活動のパターンを最長1時間にわたって画像化した。
この新手法は、神経活動に干渉する手法と神経系の構造および結合の詳細な空間マップを得るための手法とを組み合わせたものであり、動物の行動を支配する神経ネットワークの解明を進める上で役立つだろう。
doi:10.1038/ncomms8924
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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