放射線療法が、抗腫瘍免疫応答に対する皮膚がんの抵抗性を亢進させる
Nature Immunology
2015年9月8日
放射線療法が、かえって逆に免疫系を局所的に抑制し、そのために抗腫瘍免疫応答が弱まる可能性があることが、新たな研究で分かった。この知見から考えて、皮膚がんの治療への放射線利用には慎重さが求められる。
電離放射線照射は腫瘍を縮小、除去するために使われるが、免疫系の抗腫瘍応答にも影響する可能性がある。Miriam Meradたちは、放射線照射によって皮膚に局在する「ランゲルハンス細胞」(LC)とよばれる免疫系細胞が動員されることを明らかにした。放射線照射によって死んでしまう他の細胞とは違ってLCが放射線照射の影響に抵抗できるのは、DNA損傷を迅速に修復する能力が高いからだが、その一因は細胞周期阻害因子CDKN1A(p21)の発現量が高いことにある。Meradたちは、p21欠失LCをもつマウスが野生型マウスに比べて強い抗腫瘍応答を示すことを明らかにした。
一連の実験を通じてMeradたちは、LCが放射線照射によって生じる細胞残屑を、腫瘍タンパク質を含めて取り込み、流入領域リンパ節へと移動することを明らかにした。LCはそこで、免疫を抑制する制御性T細胞を刺激する。この制御性T細胞が抗腫瘍免疫応答の活性化を防ぐため、放射線治療で生き残った腫瘍細胞は全て抵抗性が高まることになる。
これに関連したNews & Views記事でLaurence ZitvogelとGuido Kroemerは、この結果は「免疫抑制のために動員されるLC(この細胞は表皮にだけ存在する)が最小限になるよう、広範な皮膚領域への放射線照射は、可能な限り避けるべきだということを示している」と記している。
doi:10.1038/ni.3270
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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