神経補綴システムを使ってヒトが行うカーソル制御でこれまでで最高の成績が得られた
Nature Medicine
2015年9月29日
四肢麻痺の患者の脳が発する神経シグナルを解読して、こうした患者がコンピューターのカーソルの動きを制御できるようにする神経補綴システムについて、新しい成果が報告されている。2人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者がこのシステムを使ってカーソル制御を行い、ヒトが行った例としてはこれまでで最高の成績が得られた。
脳卒中や脊髄損傷、神経変性疾患などのために麻痺が生じた患者の場合、随意運動を制御する健常な脳回路を再活用できるようになれば、生活の質が改善されると思われる。これまでに行われた概念証明のための臨床試験では、神経活動を解読してコンピューターのカーソルやロボット肢を制御するのは可能であることが実証されている。しかし、このような技術を臨床で広く使えるようにするには、神経補綴システムの性能をもっと高める必要があった。
J Hendersonたちは、非ヒト霊長類を使った研究で開発した神経補綴システムを臨床に適用して多数の施設でパイロット臨床試験を行い、その一例として2人のALS患者での結果を報告している。この2人の患者には、前もって外科手術によって微小電極群を運動皮質に埋め込んでおき、指の動きを想起した際の神経活動を記録した。そしてこの電極群を、神経活動を二次元運動のコマンドに翻訳する改良型解読アルゴリズムを備えた神経補綴システムに連結した。2人の患者は、神経活動によるカーソル制御を、以前のシステムを使った場合より速く、かつずっと正確に行うことができた。さらに、以前の解読アルゴリズムと今回の改良型アルゴリズムを、患者には知らせずに交互に使う実験を行い、この新しいアルゴリズムによって作業成績が客観的にも主観的にも改善されたことが明らかになった。
運動障害の原因の違いやさまざまな個人差など、他の要因がこの神経補綴システムの性能にどう影響する可能性があるかを明らかにするには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/nm.3953
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